【事例解説】高校生が電車内の痴漢でトラブルに①
高校生が電車内の痴漢でトラブルになった事例について2回に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
愛知県内の高校に通うAさんは通学中の電車内で、別の高校に通う女子高校生Bさんに「痴漢しましたよね」と腕をつかまれ、その後に停車した駅で降ろされました。
全く身に覚えのないAさんは、やっていないことを主張してその場から去ろうとしましたが、駅員室に連れていかれ、そのまま警察に引き渡されることになりました。
(フィクションです)
【痴漢をした場合は何罪に?】
電車内での痴漢行為については2023年の刑法改正により新設された不同意わいせつ罪に問われる可能性が高いです。
不同意わいせつ罪とは、刑法176条(出典/e-GOV法令検索)に定められており、同176条所定の事由により、「同意しない意思を形成、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした」という犯罪です。また、その刑罰として「六月以上十年以下の拘禁刑」が定められています。
この罪は、これまでの強制わいせつ罪で処罰対象となっていた暴行や脅迫を用いたわいせつ行為だけでなく、被害者が行為に同意していない状況でのわいせつ行為も処罰対象としています。痴漢行為はまさしく被害者が行為に同意していない状況でのわいせつ行為の典型といえるため、今回の事例でも事件化した場合、不同意わいせつ罪で捜査が進む可能性が高いでしょう。
【少年事件】
今回の事例のAさんのように、14歳以上20歳未満の罪を犯した少年のことを犯罪少年といいます。
この犯罪少年の場合、通常の刑事手続とは異なった手続で処分されることに注意が必要です。
通常の刑事手続の場合、まず検挙され、警察による捜査を受けます。そして警察の捜査が終了すると原則として検察官に送致されることになります。
検察官送致後は、検察官が事件について捜査をし、起訴不起訴の当否を判断し、起訴された場合は正式裁判になります。
他方、犯罪少年の場合、警察による捜査、検察官による捜査の後、さらに家庭裁判所に送致されます。
家庭裁判所に送致された場合、家庭裁判所の調査官が事件を調査し、少年審判を開始するか否かの判断を行い、少年審判に付されることになった場合、そこで、保護処分等(少年院送致、保護観察処分など)の少年への処遇が決定することになります。