痴漢・わいせつ事件に関連する事件
1 強制わいせつ罪(刑法176条)
痴漢行為は、迷惑防止条例違反の行為と、強制わいせつ罪にあたる行為とがあります。 そして、強制わいせつ罪にあたる痴漢は、下着の中まで手を入れる場合や、陰部を出し押し付ける等の行為態様のものです。
行為態様
(13歳以上の男女に対して) 「暴行・脅迫を用いて」、「わいせつな行為」をしたこと (13歳未満の男女に対して) 「わいせつな行為」をしたこと
「暴行・脅迫」は、相手の抵抗を著しく困難にする程度であることが必要です。
「わいせつな行為」とは、いたずらに静養を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為をいいます。
罰則
6月以上10年以下の懲役 ⇒ 罰金刑なし
ポイント
強制わいせつ罪で起訴された場合、罰金刑はありませんので、必ず懲役刑が言い渡されます。 強制わいせつ罪で捜査されているとき、被害者の方へ謝罪と賠償を行い示談することで、起訴を避けることのできる可能性が上がります。 また、起訴された場合には、執行猶予判決を求めるような弁護活動を行います。
2 強制わいせつ致傷(刑法181条1項)
行為態様
強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪(未遂を含む)によって、「人を死傷させた」こと
罰則
無期または3年以上の懲役 ⇒ 罰金刑なし
ポイント
本罪は、被害の程度が重大で、処罰の必要性が高く訴追を被害者個人の意思に委ねることが適切でないため、親告罪とされていません。 強制わいせつ致死罪で起訴された場合、裁判員裁判となります。 法定刑に「無期懲役」が含まれるからです。 裁判員裁判で審理される場合、「公判前整理手続き」(争点と証拠を整理するための手続き)が行われます。 その間、身柄拘束も長期化することとなります。 早期の捜査段階から弁護人を選任し、身柄解放のための弁護活動を行うことが重要です。 「傷害」について、判例は、軽微なものでも本罪が成立するとしています。 しかし、実務の運用では、けがの程度が軽微で、被害者が事件の公表(裁判)などを強く嫌がっているような場合、被害者の意向等も考慮し、検察官が不起訴処分とする可能性もあります。 弁護士を通じて、被害者に謝罪や賠償を行ったこともこれら判断の考慮要素となりえます。
3 公然わいせつ罪(刑法174条)
行為態様
「公然と」「わいせつな行為」をした 「公然」とは、不特定または多数人が認識しうる状態をいい、その可能性があれば足ります。 わいせつは、強制わいせつ罪と同様です。
罰則
1月以上6月以下の懲役、もしくは1万円以上30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料
ポイント
本罪は、公然と、わいせつな行為をしたときに成立し、その態様は様々です。 そのため、法定刑の幅が広いことが特徴です。 公然わいせつ罪の典型例としては、路上などで陰部を露出する行為等があります。 痴漢のため陰部を露出し、被害者に押し付けるなどの行為をした場合、強制わいせつ罪と公然わいせつ罪が共に成立することもあります。 他罪との関係について、弁護士に相談し、早期に適切な対応をとることが必要です。