各地の迷惑防止条例
【ケース】 ある日の夕方、Aさんは名鉄岐阜線に乗り、名古屋駅から岐阜駅に向かっていました。 その際、Aさんは隣の席に座っていた女子大生風の女性の太ももを触りました。 しかし、その女性は恐怖のあまり声も出せず、次の駅で降りて行ってしまいました。 Aさんは、痴漢が後日逮捕されたとの報道番組を見て、自分も警察に逮捕されるのではないかと不安で、夜も眠れません。 Aさんは、自分の行いを反省してやり直したい、逮捕されるのだけは避けたいと、警察への自首・出頭を考え、法律事務所を訪れました。 (フィクションです。) |
1 痴漢事件と管轄
このケースで、Aさんには何県の迷惑防止条例が適用されることになるのでしょうか?
まず、各都道府県で制定される条例は、基本的に制定されたその都道府県内のみに適用されます。
そのため、「愛知県」の名古屋駅から「岐阜県」の岐阜駅へ向かう電車内で痴漢行為をしたAさんについては、
①「愛知県公衆に著しく迷惑を掛ける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(以下「愛知県迷惑防止条例」と呼びます)
または
②「岐阜県公衆に著しく迷惑を掛ける行為等の防止に関する条例」(以下「岐阜県迷惑防止条例」と呼びます)
のどちらかが適用される可能性があります。
そして、捜査官は、被害者や容疑者の証言などをもとに、痴漢が行われた場所をある程度特定します。
例えば、「名鉄一宮駅から新木曽川駅の間を走行中の車内において」痴漢行為が行われたとして捜査された場合、愛知県迷惑防止条例が適用されることとなります。
一方で、例えば、岐阜県に入った「笠松駅から岐南町駅の間を走行中の車内」で痴漢行為をした場合、岐阜県迷惑防止条例が適用されることとなります。
2 条例による法定刑の違い
適用される条例が違うと何かちがうの?と、疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この違いは重大な違いが生じる可能性があります。
具体的には、条例により①処罰行為・処罰対象範囲の違い、②法定刑の違い、があります。
ここでは、迷惑防止条例違反の行為のうち特に都道府県間の違いが大きい「盗撮行為」を例にとって説明します。
①処罰行為・処罰範囲の違い
例えば、「東京都公衆に著しく迷惑を掛ける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(以下「東京都迷惑防止条例」」では、エレベーターや階段などの場所で、「スカート内をカメラやビデオ・携帯電話などで盗撮すること」に加えて、「盗撮しようとする行為」も処罰の対象行為(東京都迷惑防止条例 第5条1項2号)とされています。
また、「岐阜県迷惑防止条例」においても、公共の場所や乗り物内で「盗撮をする目的で、カメラやビデオカメラ等を設置する行為」や「カメラやビデオカメラ等を人に向ける行為」が処罰対象とされています(岐阜県迷惑防止条例 第3条1項3号、第13条1項1号)。
そして、実際に「カメラなどに被写体の映像を記録し」盗撮が完了した行為についても、処罰範囲として、特に重い罰則を定めています(第13条2項)。
一方、「愛知県迷惑防止条例」においては、このような盗撮しかけたが盗撮を完了していない行為について、処罰対象ですが,明確な規定はありません(愛知県迷惑防止条例 第2条2項3号)。
②法定刑の違い
いわゆる「迷惑防止条例」は、都道府県ごとに制定されており、それぞれ法定刑が異なっています。
「愛知県迷惑防止防止条例」に違反して盗撮した場合、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」となります(愛知県迷惑防止条例 第16条1項)。
また、常習で盗撮していた場合には、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となります(第16条2項)。
一方で、「岐阜県迷惑防止条例」に違反してカメラなどを設置し、人に向けた場合、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」(岐阜県迷惑防止条例 第13条1項1号)となり、「常習」として繰り返し違反行為をした場合、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となります(第13条8項)。
そして、実際に「カメラなどに被写体の映像を記録し」盗撮を完了した場合、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」と刑罰が重く規定されています(第13条2項)。「常習」として、盗撮を繰り返している場合、「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」となります(第13条7項)。
なお、本件のケースでは、愛知県迷惑防止条例と岐阜県迷惑防止条例違反の痴漢に関する法定刑は同じです。
そのため痴漢の場合「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」となります。
常習として痴漢を繰り返している場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」と刑罰が重くされています。
3 痴漢で逮捕を避けるには
痴漢・わいせつ事件で逮捕を避けるためには、すぐに法律の専門家である弁護士に相談することが重要です。
まだ逮捕されていない場合には逮捕を避け、在宅で捜査してもらうよう捜査機関に交渉や働きかけを行います。
刑事事件に特化した法律事務所・弁護士は、刑事事件特有の厳格な時間制限のもと、迅速な弁護活動をしてくれることが期待できます。
さらに、刑事事件について経験豊富な弁護士は、今後の見通しに基づく適切な弁護活動もできます。
弁護士法人 あいち刑事事件総合法律事務所 は、刑事事件・少年事件を専門的に取り扱う法律事務所として、開所以来、数々の痴漢・わいせつ事件を解決してきました。
痴漢・わいせつ事件で逮捕されるか不安な方、お困りの方は、
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所(0120-631-881)までお問い合わせください。