刑法ではなく条例が適用される理由

2019-01-12

刑法ではなく条例が適用される理由

事例:
勤務途中だったAは、京都市営地下鉄東西線を走行中の電車内において、着衣の上からV1(20歳)およびV2(12歳)の身体を触った。
京都府山科警察署の警察官は、Aを迷惑防止条例違反(痴漢)の疑いで逮捕した。
Aの家族は、痴漢事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~迷惑防止条例違反と刑法犯~

本件でAは、迷惑防止条例違反(痴漢)によって逮捕されてしまっています。
多くの痴漢行為は迷惑防止条例違反として処罰されているのが実情ですが、そもそもなぜ刑法の強制わいせつ罪等によるのではなく、迷惑防止条例が適用されるのでしょうか。

この点、刑法は176条において
・13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者(同条前段)
・13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(同条後段)
を、強制わいせつ罪とする旨を定めています。
つまり、強制わいせつ罪は、13歳以上の者を被害者とする場合には、
①「暴行」または「脅迫」によって②「わいせつな行為」をしたといえる必要があります。
(13歳未満の者が被害者である場合は②のみで足ります。)
しかし、電車内での痴漢行為は、着衣の上から被害者の身体を触る等の行為にとどまることが多く、これを刑法上の②「わいせつな行為」とまで言うことは難しいのです。
また、上記①の「暴行」、「脅迫」とは、被害者の反抗を著しく困難にする程度のものであることが必要であるとされています。
しかし、例えば満員電車等で被害者の反抗が困難な状況であったとしても、これは痴漢犯人自身が作出した状況とはいえませんし、身体に触れる行為を「暴行」と認定することも困難です。
このようなことから、強制わいせつ罪とまではいえない行為も処罰の必要性があることから、条例によって痴漢行為の禁止を定めることになったのです。

各都道府県が制定する迷惑防止条例では、禁止される粗暴行為の一種として、
・公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること
などと、痴漢行為を定め、禁止するに至っています。
刑法における性犯罪と比べるとその法定刑は軽いものの、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」などと、決して軽視することはできない程度の法定刑が定められていることに注意が必要です。

~痴漢事件と冤罪~

通勤等で電車を利用されている社会人の方の場合、「冤罪」と聞いてまず思い浮かべるのは、ニュースバリューの大きい重大犯罪の再審事件等よりも、より身近な痴漢事件かもしれません。
では、なぜ痴漢事件では、冤罪が起こりやすいと言われているのでしょうか。
これに関しては、特に密着状態で多数人が密集する満員電車等で行われる痴漢行為では、客観的証拠を得ることが難しいという事情が挙げられます。
このような事情から、被害者や目撃者の主観に基づく供述が、痴漢行為を立証する中心的な証拠となってしまうのです。
供述証拠には、本人の意図しないところで、見間違いや思い違いがどうしても生じていまいがちです。
したがって、痴漢事件ではそれが冤罪ではないのか、弁護士としても慎重な判断が要求されるといえます。
そこで、弁護士としては、被疑者への聞き取りを前提として、被害者等の供述が本当に信用できるのか、供述者の思い違いなどがないのか等を批判的に吟味していく必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、迷惑防止条例違反等による痴漢事件を含む刑事事件を専門として取り扱っている法律事務所です。
ご家族が逮捕されてしまった場合、弁護士による素早い弁護活動が何よりも重要です。
24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)にて、痴漢事件の弁護活動のご依頼等を承っております。
まずは、上記までお気兼ねなくお問い合わせください。
(京都府山科警察署までの初回接見費用:36,900円)

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