痴漢冤罪で逮捕
痴漢の濡れ衣を着せられ逮捕
~ケース~
Aさんは、ある朝、福岡県北九州市内を走る通勤電車に乗車していたところ、急に目の前にいた女性から「この人痴漢です」と叫ばれ、周囲の人たちに囲まれてしまいました。
Aさんとしては、女性に触れた覚えは全くないのですが、たまたま触れて勘違いされているのだと思い、女性の言う通りに駅員室へ行くことになりました。
しかし、駅員はAさんの弁解を聞いてくれず、そのまま駆け付けた鉄道警察隊に痴漢の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
その後、Aさんは福岡県小倉北警察署で身柄が拘束されることになりました。(フィクションです)
~痴漢冤罪の起きる背景事情~
満員電車など、他人と近い距離でいることになる場所においては、やってもいない痴漢の疑いをかけられることがあり、問題となっています。
痴漢冤罪事件のパターンとして、、①たまたまカバンや手が臀部などに触れたのを、被害者が故意に触れられたと勘違いする場合、②確かに痴漢行為が行われたが、真犯人ではない人が犯人として扱われてしまう場合などがあります。
いずれの場合も、警察に通報されてしまった以上、被疑者として扱われてしまいます。
無実の罪の疑いをかけられ、社会生活に制限をかけられることは、大変不幸な事態であると同時に、特に②のケースにおいては、真犯人が検挙されていない、という点でも問題があります。
~福岡県内で痴漢の嫌疑をかけられるとどうなるか?~
福岡県迷惑行為防止条例違反の罪、強制わいせつ罪の成否が検討されることになります。
福岡県迷惑行為防止条例第6条1号は、
①何人も、公共の場所又は公共の乗物において、
②正当な理由がないのに、
③人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、
④他人の身体に直接触れ、又は衣服の上から触れること
を禁止しています。
これに違反し、有罪が確定すると、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金)処せられます。
強制わいせつ罪は、①暴行、脅迫を用いて、13歳以上の者に対し、わいせつな行為をし、または、②暴行、脅迫の有無に関係なく、13歳未満の者に対し、わいせつな行為をする犯罪です。
多くの場合、臀部に手を触れた程度であれば、「わいせつな行為」には該当せず、上記の福岡県迷惑行為防止条例違反の疑いで捜査が行われるでしょう。
~痴漢冤罪で逮捕されてしまった場合、どうするべきか~
すぐに弁護士の接見を受け、どのように供述すればよいかアドバイスを受けましょう。
Aさんが頼むことができる弁護士には、次の種類があります。
(当番弁護士)
逮捕された場合に、1回だけ、無料で接見にやってくる弁護士です。
取調べに対するアドバイスなどを受けることができますが、身柄解放活動などの弁護活動を行うことはできません。
(国選弁護人)
勾留決定が出た段階で、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができない場合に、国がAさんに付する弁護士です。
基本的に費用はかからず(執行猶予が付いたり、無罪判決がなされ、社会に戻って働くことができる場合には、費用負担を求められることがあります)、さらに、当番弁護士と異なり、身柄解放活動などの弁護活動を行うことができますが、どのような弁護士が来るかは運次第です。
支払われる報酬があまりに低廉であることを理由に、あまりやる気のない弁護士や、積極的に活動してくれない弁護士がいる、といった声を聞くこともあります。
(私選弁護人)
被疑者側で費用を負担し、選任する弁護士です。
事件解決に向けて必要な報酬を提示するため、熱心に弁護活動を行ってもらえることが期待できます。
また、弁護士の人格面など、自身の相性に合った弁護士を選任することができます。
また、国選弁護人は勾留決定時に初めて付することができるのに対し、私選弁護人は勾留決定前、逮捕前であっても選任することができます。
弁護士との接見はなるべく早い方が良いでしょう。
捕まって初期のうちに認めれば出してもらえるだろうと思って認める内容の調書が出来てしまうと、後で覆すのは困難になります。
一方で、否認し続けると強圧的な取調べがされ、場合によっては虚偽の自白をせざるを得ない精神状態に陥ってしまうこともありえます。
早期に弁護士と接見し、認める内容で供述調書をとられないよう供述内容を確認するだけでなく、供述調書の閲覧や増減変更の申立て、署名押印の拒否、黙秘権の行使など、取調べのアドバイスを受けるべきでしょう。
最近では、冤罪の可能性が疑われる事件につき、勾留がつかずに釈放されるケースも出現し始めています。
弁護士の助言を受けながら、諦めずに冤罪であることを捜査機関に主張し、納得してもらうことにより、Aさんの社会復帰が早まります。
ご家族が痴漢の濡れ衣を着せられ、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。