夜行バスの中で女性に接吻し、逮捕
今回は、夜行バスの中で女性に接吻し、逮捕されてしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは夜行バスに乗り、千葉県から東京都に向かっていました。
千葉県内の高速道路を走っている際、同じバスに乗っていた女性Vに対して劣情を催し、睡眠中のVに接吻してしまいました。
Vは当初Aさんの犯行に気付かなかったのですが、接吻の態様が執拗だったので、Vが起きてしまった結果、犯行が発覚しました。
Vは運転手に頼んでバスを停車させ、警察を呼びました。
Aさんは、千葉県柏警察署に準強制わいせつ罪の疑いで逮捕されてしまいました。(フィクションです)
~準強制わいせつ罪について解説~
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為を行う犯罪です(刑法第178条1項)。
「心神喪失」とは、意識喪失(睡眠・泥酔など)、高度の精神障害などによって、性的行為につき正常な判断ができない状態にあることをいいます。
同意のない接吻は「わいせつな行為」に該当する可能性が高いと思われます(広島高等裁判所高松支部昭和27年9月24日判決)。
以上を前提にケースを検討すると、Aさんは、Vが睡眠している、すなわち、心神喪失状態にあるのに乗じて、Vに接吻し、もってわいせつな行為をしたものと評価される可能性が高いと思われます。
準強制わいせつ罪の法定刑は、強制わいせつ罪と同じく、6月以上10年以下の懲役となっています。
バスにおける痴漢行為としては、かなり重い犯罪の嫌疑をかけられることになります。
したがって、より早期に弁護士に依頼し、事件解決を目指す必要性が高い事件ということができます。
~Aさんに必要な弁護活動~
逮捕され、勾留されると、最長23日間もの間身体拘束を受けることになります。
まずは、勾留されることを回避しなければなりません。
勾留する場合は、Aさんに罪証隠滅、逃亡のおそれが認められる必要があります。
Aさんに定まった住居、職があり、信頼できる身元引受人を用意できる場合であって、Vとも特に面識がなく、住居もそれぞれ離れている、などといった事情があれば、Aさんにとって有利です。
検察官や裁判官が勾留の要件を満たさないと考えた場合は、勾留されずに釈放されます。
弁護士は、検察官や裁判官に対し、勾留の要件を満たさない旨を主張し、勾留の回避に努めます。
また、Vと示談を成立させる必要もあります。
AさんがVの身元を知らない場合、警察や検察官を通じてVの情報を得た上で、示談交渉に着手することができます。
在宅事件に移行すれば、Aさん自身でも示談交渉を行うことができますが、そもそも面会してもらえない可能性がありますし、つきまといなど他の犯罪を犯しているなどと判断されると、その犯罪により逮捕されるリスクもあります。
刑事事件において示談交渉を行う場合は、被害者との間に弁護士を立てるのがベターでしょう。
もし起訴されてしまう場合、準強制わいせつ罪の法定刑に「罰金刑」が予定されていないので、書面のみで裁判を行う「略式手続」をとることができません。
この場合は懲役刑の求刑がなされることを前提に、公開の法廷で裁判を受けなければなりません。
このような事態をなるべく避けるために不起訴処分を獲得することが望ましいのですが、起訴されてしまった場合は、執行猶予付判決の獲得を目指すことになります。
有罪判決を受け、執行猶予が付かない場合、必ず実刑判決となりますので、刑務所に行かなければなりません。
Aさんが初犯であり、判決までに示談が成立すれば、執行猶予が付く可能性が十分あります。
なるべく早期に弁護士を依頼し、より有利な事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が準強制わいせつの疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。