痴漢と出頭拒否
千葉市内に住む会社員のAさん(38歳)は、通勤電車内で痴漢をしたとして、警察官に警察へ出頭するよう求められました。Aさんは、出頭要請を拒否し続けたため逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~痴漢~
「痴漢」は、各都道府県の迷惑行為防止条例(各都道府県によって名称は異なる、以下「条例」といいます)違反に問われることが多いかと思います。
罰則は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」、あるいは常習性が認められる場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされていることが多いかと思います。
初犯の場合、被害者と示談が成立すれば不起訴となる可能性が高いでしょう。示談が成立しない場合は略式起訴されることが多く、その場合の刑罰は罰金刑です。罰金額は20万円から30万円が相場です(ただし、繰り返しますが初犯の場合です)。
また、痴漢の態様によっては刑法の強制わいせつ罪に問われることもあります。
場所を問わず(つまり、電車内か否かを問わず)、同罪に問われる可能性があります。
ここで、条例と強制わいせつ罪がどう区別して適用されるかですが、性的侵害度の高い場合はより強制わいせつ罪が適用されると考えましょう。
つまり、スカート内に手を入れ臀部を揉む程度であれば条例違反の可能性が高いですが、それより一歩進んで下着の中に手を入れ臀部を揉む行為、陰部を揉む行為は強制わいせつ罪に問われる可能性もあります。
強制わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」です。
初犯の場合、被害者と示談が成立すれば不起訴となる可能性が高いでしょう。示談が成立しない場合は起訴され有罪となれば、強制わいせつ罪は罰金刑がないですから懲役刑を宣告されます。懲役は1年から2年が相場です。
~出頭を拒否すると?~
逮捕の要件については、刑事訴訟法第199条2項に規定されています。
被疑者を逮捕するためには、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること(嫌疑の相当性)と、逮捕の必要性(逃亡、罪証隠滅のおそれがある)が求められます。
また、刑事訴訟法第198条但書に、逮捕・勾留されていない被疑者は出頭を拒むことが出来るとされています。
そのため、本来であれば、警察からの任意の出頭要請を拒否することは可能です。
他にも、例えば任意同行や事情聴取といった手続きも、被疑者側の同意の上で行われることが原則であるため、もし被疑者側に不都合があれば拒否したり、あるいは自宅での聴取を求めることも出来ます。
そのため、任意の出頭要請を拒否することが、ただちに逮捕の必要性を満たすことにはなりません。
しかし、何か正当な理由でもない限り、例え任意であっても出頭要請を拒み続けるということは、逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れがあると考えられ、今回のケースのように、逮捕されてしまうことも十分に考えられます。
もし逮捕されてしまうとなると、在宅のまま捜査が進む場合に比べ、被疑者に大きな負担がかかりますし、仮にその後勾留されるようなことになると、その間(起訴前勾留であれば最長で23日間)日常生活は送れず、仕事や学校生活にも大きな支障が出るおそれがあります。
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