【報道解説】電車内の迷惑行為防止条例違反で略式起訴
【報道解説】電車内の迷惑行為防止条例違反で略式起訴
車掌が勤務中に電車内で女性の胸を触るなどして、迷惑行為防止条例違反で略式起訴された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道紹介】
「車掌として乗務中の電車内で乗客の女性の胸を触るなどしたとして、仙台区検は6日、福島県郡山市、JR東日本元社員の男(27)を県迷惑行為防止条例違反で略式起訴した。
仙台簡裁は同日、罰金30万円の略式命令を出した。
同社は5日付で男を懲戒解雇処分とした。
起訴状などによると、男は6月19日午前0時頃、JR東北線の電車内で、ボックス席に座っていた宮城県内の10歳代女性の胸を複数回触ったとされる。
男は強制わいせつ容疑で県警に緊急逮捕されていた。」
(令和4年7月9日に読売新聞の報道より引用)
【緊急逮捕とは】
「逮捕」には通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の3つの種類があり、それぞれについて簡単に説明していきます。
報道で頻繁に目にする「逮捕」とは、「通常逮捕」の意味であることが多いです。
「通常逮捕」は、刑事訴訟法198条1項に規定されており、裁判所が発付する逮捕状に基づいて行う逮捕のことで、逮捕の原則的なかたちになります。
よく刑事ドラマで、自宅に警察官がやって来て逮捕状を示して「逮捕します」といって逮捕するシーンを見たことがあるかと思いますが、これは「通常逮捕」の様子を表しています。
次に、「現行犯逮捕」とは刑事訴訟法213条に定めがあり、今、目の前で犯罪を行っている最中や犯罪をし終えたばかりの現行犯人については、例外的に、警察に限らず誰でも、逮捕状が無くても行うことができる逮捕のことをいいます。
最後に、今回取り上げた報道にある「緊急逮捕」についてですが、「緊急逮捕」は刑事訴訟法210条に定めがあります。
そこでは、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕する」ことができるとされ、この場合の逮捕を「緊急逮捕」と言います。
「緊急逮捕」と「現行犯逮捕」を見比べると、どちらも逮捕状がなくても逮捕できるため、同じものではないかと思われるかもしれませんが、「緊急逮捕」の場合は、逮捕後直ちに裁判所に対して逮捕状の発付を求めなければならず、逮捕状を得ることが出来なければ逮捕した人を釈放しなければならないという違いがあります。
その他にも、「現行犯逮捕」は警察に限らず誰でも行うことが出来ますが、「緊急逮捕」は「検察官、検察事務官又は司法警察職員」しか行うことが出来ませんし、また、逮捕できる犯罪についても「緊急逮捕」には、「現行犯逮捕」には存在しない「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」でなければならないという条件があります。
報道では、一度、強制わいせつ罪の疑いで警察官に緊急逮捕されたとありますが、強制わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役刑となっていますから、強制わいせつ罪は長期の罰が3年以上の懲役刑でなければならないとする緊急逮捕の要件を満たす犯罪となっています。
【略式起訴・略式命令とは】
報道では、緊急逮捕後に強制わいせつ罪ではなく迷惑行為防止条例違反で略式起訴されたとあります。
略式起訴とは、検察官が簡易裁判所に対して、正式な裁判を開くことなく、書面による審理だけで被告人に対して100万円以下の罰金または科料を科する裁判(略式命令)を求めることを言います。
略式起訴をする際には、被疑者は、略式起訴をする前の捜査段階において検察官から、このような略式起訴による手続(略式手続)の内容について説明を受け、略式手続ではなく正式な裁判を受けることができることを伝えられた上で、略式手続によって事件を処理することに異議がないか確認を受ける必要があります。
異議がないことを確認した検察官は、被疑者が略式手続によることに異議がないことを明らかにした書面を起訴状に添付し、事件の証拠書類などと一緒に、管轄の簡易裁判所に提出することになります。
略式請求を受けた簡易裁判所は、提出された書面に基づいて略式命令を発するか否かについて審理を行います。
そのため、刑事事件のドラマのように、法廷で弁護人と検察官がお互いに主張し合うというような裁判は開かれません。
報道では、仙台区検察庁の検察官による略式起訴を受けた仙台簡易裁判所が罰金30万円の略式命令を下したとありますので、上記のような一連の流れがあったものと考えられます。
【略式起訴を避けたい方は】
略式起訴を受けて、簡易裁判所から略式命令に基づく罰金が科せられた場合であっても、前科が付くことに変わりはありません。
そのため、略式起訴を避けるためには不起訴処分を獲得する必要があります。
痴漢事件の場合に不起訴処分となるには、被害者の方との示談を締結することが非常に重要になります。
弁護士に被害者の方との示談交渉を依頼して、被害者の方との示談を成立することができれば、不起訴処分となる可能性が高まるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
痴漢事件を起こしてしまい、前科が付くことを避けたいとお考えの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。