【事例紹介】電車内の痴漢で不同意わいせつ罪が適用
電車内での痴漢行為で不同意わいせつ罪の疑いにより男が逮捕された事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
電車内で女性に痴漢をしたとして、大阪府警は14日、大阪市建設局職員の男(23)を不同意わいせつの疑いで逮捕し、発表した。「太ももは触っていないが、ふくらはぎは触った」と容疑を一部否認しているという。
府警によると、性犯罪の規定を見直した改正刑法の施行後、同容疑での逮捕は府内で初めて。
枚方署によると、男は13日午後、大阪市から大阪府枚方市へ走る京阪電車で、2人用座席の隣に座った20代女性の太ももやふくらはぎをなでた疑いがある。男は他の乗客らに促されて次の停車駅で降り、駅員が110番通報したという。
不同意わいせつ罪は、13日施行の改正刑法で定められた。暴行・脅迫や恐怖・驚愕(きょうがく)、地位利用など8項目の要因で同意しない意思を示すのが困難な状態にさせ、わいせつな行為をした場合に成立するとされる。
府警は8項目のうち、「予想と異なる事態に起因する恐怖・驚愕(きょうがく)」によって被害者が不同意の意思を示せなかったと判断し、逮捕に踏み切ったという。不同意わいせつ罪の法定刑は6カ月以上10年以下の懲役。
大阪市は「誠に遺憾。事実関係を確認の上、厳正に対処する」とのコメントを出した。(甲斐江里子)
(7月14日に配信された朝日新聞デジタルの記事を引用しています。)
不同意わいせつ罪の成立要件
不同意わいせつ罪は刑法176条1項の場合は、次の①から⑧のいずれかを原因として、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ、あるいは相手方がそのような状態にあることに乗じて、わいせつな行為をすると成立します。
①暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
②心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
③アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
⑤同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕(がく)させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
⑧経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
不同意わいせつ罪の適用について
痴漢行為の多くは、これまで各都道府県の迷惑防止条例で処罰されていました。
しかし、7月13日の改正刑法の施行により、強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪が統合され不同意わいせつ罪になり、暴行・脅迫が必ずしも必要な要件ではなくなったため痴漢行為への不同意わいせつ罪の適用可能性が取り沙汰されていました。
本事件は、電車内での痴漢行為が⑥の「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させる」ことによって同意しない意思を形成することが困難な状態にさせ、わいせつな行為をしたといえるとして逮捕されています。
このように、今後は痴漢行為について不同意わいせつ罪が適用される場面が増えてくることが予想されます。
大阪府の迷惑防止条例では、痴漢行為の法定刑は「6月以下の懲役又は50万円以下」と定められています。もっとも、不同意わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」となっており、不同意わいせつ罪と認められた場合、非常に重たい刑罰をかせられるおそれがあります。
痴漢事件に強い弁護士
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、痴漢事件での示談成立による不起訴処分を獲得した実績が多数あります。
迷惑行為防止条例違反(痴漢)や不同意わいせつ罪で自身やご家族が事件を起こし不安を抱える方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。