【事例解説】痴漢事件において不同意性交の疑いで男が逮捕①
痴漢事件で不同意性交の疑いで男が逮捕された事例を参考に、痴漢に成立する犯罪や受ける刑罰について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
通勤のため満員電車に乗っていたAさんは、前に立っている女性のスカート内に手を入れ陰部に指を入れる痴漢行為をしてしまいました。被害を受けた女性が声を上げたことで、近くの乗客にAさんは取り押さえられました。
次の駅でAさんは電車から降ろされ、通報により駆けつけた警察官に不同意性交等の疑いで逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
痴漢には何罪が成立する?
比較的軽微な痴漢行為については、各都道府県が定める「迷惑防止条例」によって処罰されます。
軽微な痴漢とは、ズボンの上から太腿を撫でた場合や、服の上から胸に触れたような場合をいいます。
一方で、服の中に手を入れて胸、局部、お尻を触るなどの行為をした場合には、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
不同意わいせつ罪は、改正前まで強制わいせつ罪と呼ばれていたもので成立要件としては、被害者が13歳以上の場合には「暴行又は脅迫」を用いて「わいせつな行為」をしたといえる必要がありました。
しかし、不同意わいせつ罪に変わったことにより「暴行又は脅迫」が必ずしも必須の要件ではなくなったため、痴漢行為にも不同意わいせつ罪が適用されることが多くなってきています。
また、事例にあるようにスカート内に手をいれて陰部内に指を入れるような痴漢行為をした場合、不同意性交等罪が成立する可能性があります。
それぞれの法定刑について
迷惑防止条例違反の場合、痴漢行為を処罰する罪の法定刑は定められている都道府県によって多少の違いがあります。
東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例では、痴漢行為についての法定刑は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」となっています。
不同意わいせつの場合は、法定刑は刑法176条に定められており「6月以上10年以下の懲役刑」となっています。
不同意性交等罪の場合も同様に刑法に定めれており177条において「5年以上の有期懲役」となっています。
このように、迷惑防止条例違反で処罰されるのと不同意性交等罪で処罰されるのには受ける可能性のある刑罰に大きな違いが生じてきます。
軽い気持ちやほんの出来心でしてしまった痴漢行為であっても取り返しのつかない刑罰を受ける可能性があります。