【事例解説】電車内で女子高校生への痴漢で逮捕(後編)
通勤途中の電車内で女子高校生に痴漢をしたとして逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
会社員のAさんは、通勤途中の電車内で女子高校生の後ろからスカート内に手を差し入れて臀部を触るなどの痴漢行為をしました。
被害を受けた女子高校生が声を上げたことで痴漢行為に気付いた周りの乗客にAさんは取り押さえられ駆け付けた警察に引き渡されることになりました。
Aさんは、警察に連れていかれる間際に「痴漢と間違われて連れていかれそうになっている」と会社に電話した後、逮捕されるに至りました。
会社の人たちもAさんと連絡が取れなくなったので緊急連絡先に指定されていたAさんの妻に連絡をとって事情を話しました。
会社から事情を聞いたAさんの妻は、事件の詳細を知るために弁護士に初回接見を依頼しました。
(フィクションです。)
不同意わいせつ罪について
刑法176条1項では、不同意わいせつ罪が成立する場合として、大きく次の3つの要件を満たす必要があります。
(1)下記①~⑧に掲げる行為又は、①~⑧に類する行為・事由があること
(2)(1)によって同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせるか、又はその状態にあることに乗じること
(3)わいせつな行為をしたこと
そして、(1)の要件である①~⑧に掲げる行為・事由は、具体的には次の8つです。
①暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
②心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
③アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
⑤同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
⑧経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
これらの(1)~(3)の要件を満たした場合には、不同意わいせつ罪として、6か月以上10年以下の拘禁刑が科される可能性があります。
痴漢行為の場合、①~⑧の事由の内、⑤の事由に当たると判断されることが多いでしょう。
通勤電車内での混雑に乗じて体を触る場合などは、被害者にとって突然のことであり防ぎようがない状態にあるので「いとまがない」場合に当たることになります。