AirDrop痴漢で検挙

2019-10-21

AirDrop痴漢で検挙

AirDrop痴漢について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

東京都武蔵村山市に住む会社員のAさん(25歳)は、市内を走行する電車に乗車中、前に座っていた女性Vさんのことが気になり、Vさんに近づき、自身のスマートフォンに搭載されていたAirDrop機能を使い、「今日のパンツは何色?」と書いた紙を撮影した写真画像をVのスマートフォンに送信しました。その後、Aさんは、こうしたAさんの行動を不審に感じた男性に声をかけられ、「今、女性に何か変な画像送りませんでしたか?」などと言われたことから、「送りました。」「すみません。」と自分の行ったことを認めました。その後、Aさんは、男性やVさんとともに警視庁東大和警察署に行き警察官に事情を話した後、東京都迷惑行為防止条例違反の被疑者として事情を聴かれることになりました。Aさんは逮捕されることはなく、その日は自宅へ帰されました。しかし、今後のことが不安になったAさんは、痴漢事件の知識、経験が豊富な弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです。)

~ 福岡県でAirDrop痴漢を検挙 ~

今年8月、福岡県早良警察署は、AirDrop痴漢をした37歳の男性を検挙し、福岡区検察庁へ書類送検しています。男性は、電車内で女性のiPhoneにわいせつな写真を送信した疑いがもたれています。男性が電車内でスマホを手にしながら周囲をうかがうなどの不審な行動をしていたところ、他の男性に見つかり、警察に通報されたようです。男性は過去にも何回か同じことをしていたといいます。

~ AirDrop(エアドロップ)とは ~

ところで、AirDropは、一定の世代以降のApple製端末(iPhoneやiPadなど)に標準搭載されている機能です。半径9メートル以内の通信可能な所有者の名前が画面に一覧で表示され、名前を選択してすぐに写真や動画を送受信できる、というもので、設定さえしておけば誰とでも行えます。メールアドレスなどを交換せずBluetooth経由で写真や動画を送信できる、また、通信料がかからない手軽さから若者を中心に利用者が多い、と言われています。

~ AirDrop痴漢はどんな罪に当たる? ~

ところが、こうした手軽さを悪用した犯罪が

AirDrop痴漢

です。
AirDrop痴漢とは、AirDrop機能を利用して、全く見ず知らずの人のスマートフォン宛にわいせつな写真や動画を送信しこれを閲覧させる犯罪です。満員電車や人ごみの多い場所では誰が犯人か特定しづらく、AirDrop痴漢はこうした場所を中心に行われることが多いと言われています。

では、AirDrop痴漢がどんな犯罪に当たるのかみていきます。

まずは、東京都迷惑行為防止条例(以下、条例)に規定されている「卑わいな言動の罪」です。この罪は、条例5条1項3号に規定されています。

条例5条1項
 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で次に掲げる行為をしてはならない。
(1) (略)
(2) (略)
(3) 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること

罰則は条例8条1項及び8条8項に設けられています。
条例8条1項は通常の痴漢行為に対する罰則で「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」、8条8項は、常習として痴漢行為を行った際の罰則で「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。

~ AirDrop痴漢の卑わいな言動 ~

卑わいな言動」とは、社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいうと解されています。
卑わいな言語の例としては「おっぱい触らせて」、「下着見せて」などが挙げられます。卑わいな動作の例としては、臀部、太腿、膝頭に触る、「スカートをまくる、スカー卜のチャックをはずす、スカートの下からのぞき見する、などの行為が挙げられます。

なお、AirDropを使ってナンパする方もおられるようです。
通常、その言動が「卑わいな言動」に当たることは少ないと思われますが、内容によっては「卑わいな言動」に当たることもありますから注意が必要です。

~ 不起訴処分獲得のための弁護活動 ~

AirDrop痴漢であっても刑事事件化すると、いずれは検察官の起訴、不起訴の刑事処分を受けます。
起訴されると正式裁判、あるいは略式裁判を受けなければなりません。もっとも、Aさんが初犯であったり、常習性が認められない場合などは、略式裁判を受けることが多いと思われます。略式裁判では罰金刑の命令が言い渡されます。

もしも、起訴されたくない、すなわち不起訴処分を獲得したいとお考えの場合は、被害者と示談交渉を始め、示談を成立させ、その結果を検察官に提示する必要があります。ただ、この手の犯罪の場合、当事者間で示談交渉することは様々な困難が伴いますから、示談をご検討の方は弁護士示談交渉をご依頼ください。

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