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【事例解説】路上での痴漢行為が不同意わいせつ致傷罪に
路上での痴漢行為が不同意わいせつ致傷罪に問われうるケースについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例紹介
Aさんは、深夜、東京都内の路上で、仕事帰りの女性Vさんの後ろから両手で胸やお尻を掴むといった痴漢行為を行い、このとき、Vさんを転倒させて、膝にケガを負わせました。
Aさんは、その場から逃走しましたが、偶然、周囲をパトロールしていた警察官に見つかり、Aさんは不同意わいせつ致傷罪の疑いで現行犯逮捕されました。
(この事例はフィクションです)
不同意わいせつ致傷罪はどれくらいの罪?
事例のように、相手の不意をついて後ろから胸やお尻を掴むといった痴漢行為は刑法176条1項5号(出典/e-GOV法令検索)が規定する不同意わいせつ罪に当たる可能性が高いです。
不同意わいせつ罪の法定刑は6か月以上10年以下の拘禁刑となっています。
この不同意わいせつ罪については、刑法181条1項が、
「第176条…(中略)…の罪…(中略)…を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は3年以上の懲役に処する。」
と規定し、不同意わいせつ罪によって人を死亡させたり、傷害を負わせたりした場合を不同意わいせつ致傷罪として、不同意わいせつ罪よりも重く処罰しています。
事例のAさんも、不同意わいせつ罪に当たると考えられる痴漢行為の際に、Vさんを転ばせてVさんの膝にケガを負わせていますので、不同意わいせつ致傷罪に当たると考えられます。
不同意わいせつ致傷罪の法定刑は、引用した刑法181条1項に規定されている通り、無期又は3年以上の懲役刑となっています。
不同意わいせつ致傷罪で警察に逮捕されたら?
このように、不同意わいせつ致傷罪の法定刑は無期又は3年以上の懲役刑と刑が重い犯罪になりますが、逮捕されたご本人が罪を認め、弁護士を通して被害者の方と示談を締結することができれば、早期に釈放されたり、不同意わいせつ致傷罪の前科が付くことを回避したりということの可能性を高めることができます。
そのため、ご家族が不同意わいせつ致傷罪の疑いで警察に逮捕されたら、いち早く弁護士に依頼して初回接見に行ってもらい、事件の概要や今後の見通しといったことについてアドバイスを貰われることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は痴漢事件をはじめとする刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
ご家族が不同意わいせつ致傷罪の疑いで警察に逮捕されてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。
無料相談・初回接見のご依頼はフリーダイヤル(0120-631-881)で24時間受付中です。
【事例解説】電車内での同性に対する痴漢事件
電車内での同性に対する痴漢事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例紹介
会社員である男性のAさんは、通勤のために利用している電車内でスーツ姿の男性のVさんを見つけて、混雑している社内の状況を利用して、Vさんに痴漢行為をしました。
Vさんは痴漢されていることに気がついて、痴漢行為をしているAさんの手を掴んで、そのままAさんと一緒にそのまま次の停車駅のホームに降りました。
Vさんは駅員に事情を説明して、Aさんは駅員からの通報によって駆け付けた警察官に署まで連れていかれることになりました。
Aさんは素直に痴漢行為を認めたことで、逮捕されることはなく、その日の夜に自宅に帰ることができました。
Aさんは、被害者の方との示談交渉のために、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(この事例はフィクションです)
同性に対する痴漢事件
事例のAさんは自身と同性の男性に対する痴漢行為を行っていますが、具体的にどのような痴漢行為をしたのかによって、問われる罪が異なってきます。
AさんがVさんのスーツ越しに軽く手でお尻を触ったという痴漢行為であれば、各都道府県が定める迷惑行為防止条例違反に該当する可能性が高いですし、また、AさんがVさんのスラックスのチャックを降ろして、Vさんの性器を直接手で触った、揉んだという痴漢行為の場合には、刑法176条(出典/e-GOV法令検索)が定める不同意わいせつ罪に問われる可能性があります。
迷惑行為防止条例違反の場合の法定刑については、東京都の場合は6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金刑となっていて(東京都迷惑行為防止条例違反8条1項2号)、不同意わいせつ罪の法定刑は6か月以上10年以下の拘禁刑となっています。
痴漢の被害者の方との示談交渉をお考えの方は
事例のAさんは警察に連れていかれた後、逮捕されることなく自宅に帰ることができていますが、だからといって、痴漢事件が終了したという訳ではありません。
今後は在宅事件といった形で捜査が進められることになりますので、痴漢事件で前科を付くことを回避したいとお考えになっている場合は、弁護士に相談して被害者の方との示談交渉を依頼されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は痴漢事件をはじめとする刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
痴漢の被害者の方と示談をしたいとお考えになっている方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。
【制度紹介】刑法改正 痴漢行為の処罰への影響について②
刑法が改正されたことによる痴漢行為に対する処罰への影響について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
会社に通勤するために混雑する電車に乗っていたAさんは、目の前に立っていた女性のスカートの中に手を入れて下半身を触りました。
被害を受けた女性Vが声を上げたことで、近くにいた男性がAさんの犯行に気づき、Aさんは現行犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
「不同意性交等罪」について
まず、条文については以下のように変わります。
第177条 前条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛(こう)門性交、口腔(くう)性交又は膣(ちつ)若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第179条第2項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑に処する。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3 16歳未満の者に対し、性交等をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第1項と同様とする。
痴漢行為に対する処罰に影響を与える変更点としては、「性交等」に当たる行為の対象が拡大されたことにあります。
今回の改正により、膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為についても「性交等」に該当することになりました。
そのため、痴漢行為の中で、身体の一部若しくは物を被害女性の膣若しくは肛門に入れたような場合には、その他の要件を満たせば不同意性交等罪が成立する可能性があります。
痴漢事件に強い弁護士
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、痴漢事件での示談成立による不起訴処分を獲得した実績が多数あります。
迷惑行為防止条例違反(痴漢)や不同意性交等罪で自身やご家族が事件を起こし不安を抱える方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
【制度紹介】刑法改正 痴漢行為の処罰への影響について①
刑法が改正されたことによる痴漢行為に対する処罰への影響について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
会社に通勤するために混雑する電車に乗っていたAさんは、目の前に立っていた女性のスカートの中に手を入れて下半身を触りました。
被害を受けた女性Vが声を上げたことで、近くにいた男性がAさんの犯行に気づき、Aさんは、現行犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
性犯罪規定を見直した改正刑法が成立
不同意性交等罪の新設を含む改正刑法は、2023年6月23日に交付され、施行日は同年7月13日となります。
7月13日以降の事件については、後述する「不同意わいせつ罪」及び「不同意性交等罪」が適用されることになります。
今回の改正で。「強制わいせつ罪」と「準強制わいせつ罪」が統合され、新たに「不同意わいせつ罪」という罪名になります。
また、「強制性交等罪」と「準強制性交等罪」も同様に統合され「不同意性交等罪」に罪名が変わります
今回は「不同意わいせつ罪」の条文の内容について解説します。
「不同意わいせつ罪」について
まず、条文については以下のように変わります。
第176条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕(がく)させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第1項と同様とする。
痴漢行為に対する処罰に影響を与える変更点としては、必ずしも暴行、脅迫が要件ではなくなったことです。
不同意わいせつ罪の構成要件は、①1号~8号又はこれに類する行為により②同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、③わいせつな行為を行うことです。
そのため、これまでは暴行又は脅迫までは認められないとして強制わいせつ罪には問われなかった行為が、不同意わいせつ罪に問われる可能性があります。
たとえば、電車内での痴漢行為は、5号や6号の事由に当たり得るため、今後いかなる判断がなされるかには注意する必要があります。
次回は、痴漢行為の処罰に影響を与える「不同意性交等罪」について解説します。