痴漢で逮捕、釈放されたら
痴漢で逮捕、釈放されたら
東京都日野市に住む会社員のAさん(45歳)は、通勤電車内で痴漢をしたとして、警視庁日野警察署の警察官に東京都迷惑行為防止条例違反で逮捕されました。実は、Aさんは、以前から同じ電車内で痴漢を繰り返しており、警察官から目をつけられていました。Aさんは取調べで痴漢をしたことを素直に認め、Aさんの妻が身柄引受人となったことなどから、その日に釈放されました。
AさんとAさんの妻は、釈放されたことに安堵していたところ、今度は東京地方検察庁から出頭するよう呼び出しを受けてしまいました。AさんとAさんの妻は、今後どうしていけばよいか不安になり、痴漢事件の経験豊富な弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです)
~ 痴漢ってどんな行為?罰則は? ~
痴漢罪という罪の名前はありませんし、「痴漢」の定義が置かれている法律、条例もありません。
しかし、全国各都道府県では、名称こそ多少異なるものの、条例で痴漢行為を禁じる規定を設けています。たとえば、東京都迷惑行為防止条例(以下、条例)を例にとりますと、条例5条1項1号には次の規定が設けられています。
5条1項 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
1号 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に身体に触れること
これがいわゆる痴漢行為を禁じる規定です。ですから、これからすると痴漢とは、
公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に身体に触れる行為
ということになります。
罰則は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」と規定されています(条例8条1項2号)。ただし、常習性が認められる場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」と規定されています(条例8条8項)。全国的にほぼ同様の罰則となっています。
~ 釈放されたからと言って安心はできない ~
痴漢が見つかった場合、逮捕されることもあれば逮捕されないこともあります。
また、仮に逮捕された場合でも、逮捕から勾留に至るまで(およそ2~3日)に捜査機関の判断や裁判官の決定により釈放されることがあります。
ただし、釈放されたからといって捜査が終了したり、刑事処分(起訴、不起訴)が決まったわけではありません。
~ 逮捕→(勾留前)釈放後の流れ ~
警察の捜査も未了である場合が多いと思われます。
したがって、釈放後も警察による呼び出しを受け、取調べや実況見分への立ち会いを求められるでしょう。
そして、警察での捜査が終了した段階で、今度は検察庁から呼び出しを受けます。検察庁では取調べを受けることがメインとなるでしょう。この間、警察からの呼び出しを受けることもあります。つまり、刑事処分が決まるまでは、警察、検察から呼び出しを受ける可能性があることは覚悟しておいてください。
~ 釈放されると国選弁護人がつかない ~
釈放された場合のもう一つの注意点として、国選弁護人は選任されないということです。
つまり、逮捕され、勾留(10日間の身柄拘束)されれば国選弁護人が選任されるのですが、釈放された場合はご自身で私選の弁護人を選任しないかぎり弁護人は選任されないのです。
釈放されたからといって、捜査機関の捜査の手が緩められるわけではありません。
また、処分が身柄を拘束されたときよりも軽くなることもありません。
つまり、釈放され、弁護人を選任しないまま捜査機関の捜査を受けるだけになってしまうと、捜査機関の不当・違法な取り調べを受けるおそれも高くなりますし、本来、不起訴処分を獲得できた事案でも起訴され、懲役刑や罰金刑を科されてしまうおそれも出てきます。
こうした場合は、私選の弁護人を選任することも検討しましょう。
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