身に覚えのない痴漢事件の弁護活動
今回は、痴漢冤罪事件における取調べの対応方法につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは、電車内で痴漢をした疑いで大阪府鉄道警察隊に現行犯逮捕された後、現在も勾留されています。
Aさんは取調べで犯行を否認していますが、取調べにあたる警察官は「略式手続ですぐに終わる事件だ。実際に略式にするかは検事次第だが、これに応じればすぐに出られる。否認で頑張るのもつらいぞ」などと、しきりに痴漢行為を行ったことを認めさせようとしています。
取調官がAさんの言い分を聞いてくれない場合はどうすればよいのでしょうか。
また、略式手続とはいったい何でしょうか。(フィクションです)
~痴漢冤罪について~
都市部の電車内は、通勤・通学ラッシュ時間帯、大変に混みあうので、他人と体が接触、密着しがちになります。
このような状況で、誰かに触られたと勘違いされることにより、痴漢の犯人として検挙されてしまうケースがあります。
また、確かに誰かが痴漢行為を行ったが、真犯人は満員電車の人ごみに紛れ、犯人ではない方が痴漢の被疑者として検挙される場合も考えられます。
いずれも痴漢冤罪の典型例ですが、やっていない犯罪の疑いで逮捕・勾留され、有罪判決を受けることなどは絶対にあってはなりません。
また、真犯人は犯行後、逃亡できてしまう、という点でも痴漢冤罪は許容しがたいといえます。
~取調べではどう対応するか?~
取調べでは、Aさんが供述した内容をまとめた調書が作成されます。
Aさんが供述した内容を、警察官や検察官がまとめ、録取して文書化する場合(供述調書)、Aさんが自ら供述内容を記載する場合(供述書)があります。
これらの文書は裁判で事実を認定する証拠となりえます。
供述調書の作成過程には、かねてから問題視されている点があります。
それは、Aさんが供述した内容が文書化されるまでに、捜査官の思考というフィルターが介在している点です。
Aさんが供述した通りに調書が作成されない場合があり、全く供述していないことや、供述したことと微妙に意味合いの異なる事項が記載される場合もあります。
供述調書は、署名押印をする前に、これを閲覧し、又は、読み聞かせてもらい、誤った点がないかを判断する機会があります。
誤った点があれば、取調官にその旨を必ず伝えましょう。
修正に応じてくれない場合は、署名押印を拒否してもかまいません。
~取調官がAさんの供述を聞いてくれない点~
捜査機関の考える犯行のストーリーを、被疑者に一方的に押し付ける態様の取調べは適正とはいえません。
疲弊した被疑者がこれに迎合してしまうと、冤罪事件で有罪判決を受ける可能性がより高まることになります。
あまりにAさんの言い分を聞いてくれない場合には、弁護人から捜査機関へ抗議をすることも考えられますし、また、黙秘してしまうことも一つの選択肢といえるでしょう。
~略式手続とは~
被疑者の同意を得て、検察官の請求する証拠のみにより、非公開で事実の認定を行い、略式命令(100万円以下の罰金又は科料)を言い渡す手続です。
必ず有罪判決を受けることになる、というデメリットがありますが、略式手続に同意すれば、略式命令が出るとともに、身柄を解放されます。
言い渡された罰金や科料を納付すれば、手続は終了です。
ただし、略式手続には、他にも重大なデメリットがあります。
それは、Aさんの言い分を裁判官に訴えることができず、また、検察官の主張を争うこともできない、という点です。
冤罪であっても、有罪判決を受けてしまうことになるため、無実の罪で前科をつけることになってしまいます。
冤罪であると主張している場合においては、略式手続に同意するか否かについて、十分弁護士と相談する必要があるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、痴漢事件の解決実績も豊富です。
ご家族が痴漢の疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。