痴漢事件で冤罪

2019-12-10

痴漢事件で冤罪

痴漢事件冤罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ ケース ~

東京都西東京市に住むAさんは、路上を通行していた女子中学生Vさん(15歳)の背後からいきなりVさんの胸を両手で鷲掴みしたとして、警視庁田無警察署の警察官により強制わいせつ罪の疑いで逮捕されまました。Aさんの家族は、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼することにしました。
Aさんは、接見に来た弁護士に「冤罪です。転びそうになって慌てて手を出したら女性に触れてしまったんです」と話しました。
(フィクションです。)

~ 痴漢はどんな罪に当たる? ~

「痴漢罪」という罪名はございません。ではいったいどんな法令に違反し、どんな罪に当たり、どんな罰則が設けられているのでしょうか?

まずは、東京都迷惑行為防止条例(以下、条例といいます。)に当たるおそれがあります。
条例5条1項1号には次の規定が設けられています。

第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。

なお、本罪は故意犯ですから、本罪が成立するには、犯罪の故意、つまり

触れてやろうという意図

が必要です。ですから、満員電車内などでたまたま(偶然に)他人の身体に触れたという状況が認められる場合には、故意がなく、本罪は成立しません。

罰則は、通常の場合、

6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金(条例8条1項2号)

ですが、常習性が認められる場合は

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(条例8条8項)

です。

また、痴漢行為の態様によっては、上記条例違反の罪ではなく強制わいせつ罪に当たるおそれが出てきます。
強制わいせつ罪は刑法176条に規定されています。

刑法176条
 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

被害女性の背後から近づき、いきなり女性の胸を両手で鷲掴みにする、という行為は、強制わいせつ罪に当たると考えられます。
ここで、一見すると「暴行」行為が行われていませんが、強制わいせつ罪の場合、「暴行それ自体がわいせつな行為であってもよい」と解されています。
このことから、「暴行」兼わいせつな行為を行った時点で、ただちに強制わいせつ罪が既遂になると考えられていますから注意が必要です。

更に、痴漢行為の機会に、被害者に怪我をさせた場合は、強制わいせつ致傷罪が適用されるおそれが出てきます。

刑法181条
 第176条(略)の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は6年以上の懲役に処する。

~ 痴漢では冤罪が生じやすい ~

痴漢事件では、冤罪が生じやすいと言われています。

それは、一つには、

痴漢事件では客観(物的)証拠が乏しい

という点が挙げられます。
客観証拠とは、その名のとおり、主観(先入観、偏見など)が排除された証拠、つまり、純粋に事実のみを映し出した証拠のことをいいます。
たとえば、防犯ビデオカメラ映像などが客観証拠に当たります。しかし、痴漢事件ではその客観証拠が乏しいのです。

そうすると、痴漢を立証しなばならない捜査機関とすれば、どうしても被害者、目撃者の供述などの主観(供述)証拠に頼らざるをえなくなるのです。
しかし、主観証拠は、思い込み、先入観、捜査官による誤導や誘導で汚染される場合もあります。また、時が経てば経つほど記憶は薄れ、事件時の記憶は曖昧になってくるものです。
痴漢事件では、そうした危険な主観証拠に頼らざるを得ないことから、冤罪が生まれやすいと言われています。

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