痴漢事件と不起訴

2019-09-26

痴漢事件と不起訴

兵庫県尼崎市に住むAさんは、満員の通勤電車に乗って職場へ向かう途中、前に立っていた女性Vさんの太ももなどを触りました。すると、Aさんは、Vさんから大声を上げられ、「この人痴漢です」と言われたことから周囲にいた男性に次の降車駅で降ろされてしまいました。そして、Aさんは駆け付けた鉄道警察隊の警察官に兵庫県迷惑行為防止条例違反逮捕されてしまいました。Aさんは不起訴処分獲得に向けて私選の刑事弁護人を選任しました。

~ 痴漢行為 ~

痴漢行為は、各都道府県自治体が定める迷惑行為防止条例(名称は各都道府県により異なる)によって禁止され、罰則も設けられています。

概ね、どの条例でも、痴漢行為を

人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法

で、

公共の場所、あるいは公共の乗物

において、

衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れる行為

痴漢行為として禁止しているようです。

ただし、一言で痴漢といっても、行為態様などによっては強制わいせつ罪(刑法176条)に問われる可能性もあることから注意が必要です。

刑法176条
 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪では、「暴行又は脅迫」が必要とされていますが、「暴行」それ自体がわいせつな行為であっても同罪は成立すると解されています。
たとえば、

いきなり、女性の背後から胸を揉む

などの行為です。
こうのように、一見、条例違反と区別のつかない行為が強制わいせつ罪に当たる可能性がありますから注意が必要です。
一般的には、痴漢行為の内容が性器に直接触れるなど悪質であれば、条例違反ではなく強制わいせつ罪となる可能性が高くなります。

~ 不起訴とは ~

不起訴とは、検察官が下す終局処分(その事件について起訴・不起訴を終局的に決める処分)の一種で、その意味は文字通り、起訴されないということです。
不起訴は、検察官が下す終局処分の一種ですから、不起訴処分にできる権限を持つのは警察官でもなければ、裁判官でもなく、

検察官

です。検察官の元には、警察や検察の捜査で収集した証拠が全て届けられます。その証拠の中には、被疑者(犯人)にとって不利な証拠もあれば、有利な証拠も含まれています。したがって、検察官は、それらの証拠を総合的に判断して、事件を起訴するか、不起訴にするか判断できる立場にあるのです。

~ 不起訴の理由にも種類がある ~

検察官が不起訴と判断するに至った理由の「題名」のことを裁定主文といいます。よく目にするのが、「起訴猶予」と「嫌疑不十分」です。
起訴猶予とは、検察官が、証拠から犯罪であることは明らかであるが、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況から起訴する必要がないと判断したときに裁定するものです。

刑事訴訟法248条
 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

嫌疑不十分とは、検察官が起訴するに足りる証拠が集まっていないと判断したときに裁定するものです。

~ 理由によって弁護活動が異なる ~

どんな不起訴理由を獲得するか、によって痴漢の弁護活動は異なってきます。

起訴猶予獲得を目指す場合は、被害者との示談交渉がメインとなります。
嫌疑不十分獲得を目指す場合は、被疑者が痴漢行為を否認している場合が多いと思われます。したがって、接見を頻繁に行って、取調官の誘導に乗らないよう、取調べに関するアドバイスをさせていただいたり、被疑者の言い分をお聴きし、意見書などを検察官に提出するなどします。

~ 不起訴処分を受けたら? ~

不起訴処分を受けたら、刑事裁判にかけられることはなく、裁判所に出廷する必要はありません。したがって、懲役、罰金の刑罰を受けることもなく、前科が付くこともありません(前歴は残ります)。
身柄を拘束されている場合は、釈放される可能性が高いでしょう(ただし、不起訴処分を受けたことが釈放の条件ではありません)。

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