痴漢事件発覚前の自首
痴漢事件発覚前の自首
神奈川県三浦市在住のAさん(20代男性)は、ショッピングモール内の多くの通行人に紛れて、通行人女性の身体を触る痴漢行為をしてしまった。
被害者女性が近くの店員に助けを求めたことで、Aさんは店員から呼び止められたが、そのまま逃走した。
後日にAさんは、深く後悔の思いを持つようになり、もし被害者女性が警察に通報していた場合に、Aさんは警察に逮捕されるのではないかと不安になり、「こんなに苦しい思いを続けるくらいなら、警察に自首したい」と考えるようになった。
Aさんは、刑事事件に強い弁護士に無料法律相談することで、警察に自首する際のアドバイスを受けることにした。
(事実を基にしたフィクションです)
~自首が成立するための要件とは~
「自首」とは、「犯人が、捜査機関に発覚する前に、自己の犯罪事実を申告すること」をいいます。
自首することにより、刑事処罰が減軽されたり、逮捕リスクを低くする効果があると考えられます。
・刑法42条1項 (自首等)
「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」
他方で、「犯人が、捜査機関が既に事件や犯人を知っている段階で、自己の犯罪事実を申告した」としても、これは自首とはならず、単なる警察署への任意出頭となります。
そこで、どのような要件のもとで自己の犯罪事実を申告することで「自首」が成立し、自首による刑罰減軽の効果を受けられるかが重要となります。
裁判所の判例によると、自首成立の要件となる「捜査機関に発覚する前」とは、「犯罪事実が全く捜査機関に発覚していない場合」に加えて、「犯罪事実は発覚しているが、その犯人が誰であるか全く発覚していない場合」にも、自首が成立するとされています。
例えば、既に痴漢被害者から被害届が警察に提出されている事件につき、後から犯人が警察に自首したような場合には、犯人が誰であるか全く発覚していなければ、自首成立による刑罰減軽の可能性があります。
一方で、犯人が警察に自首しようとした時点で、被害届や目撃証言の情報等から、既に犯人が誰であるかの目星が付いていたり、犯人に関しての有力な手掛かりがある捜査状況だとすれば、自首は成立しないおそれが考えられます。
また、自首は、犯人が自発的に申告することを要件としています。
警察官の職務質問や取調べを受けた際に、嫌疑となっている事件につき事実を認めたとしても、自発的申告ではないため、自首は成立しないと考えられます。
犯人を特定せずに犯罪事実を申告したり、他人の犯罪事実について申告した結果として、自己の犯罪事実が発覚した場合にも、「自己の犯罪事実の申告」には当たらず、自首は成立しないとされています。
自分の側から自らの罪を認めて、潔く責任を取ったり刑事処罰を受ける意思を示すことで、自首成立による刑罰減軽の効果が認められるものと考えられます。
~自首成立による効果とは~
事件の発覚前から警察に「自首」することによって、「刑事処罰の減軽」と「逮捕リスクを避けること」の2点の効果があると考えられます。
自首による「刑事処罰の減軽」は、「必ず減軽される」という意味合いでは無く、刑法条文に「減軽することができる」と規定されるように、刑事処罰の量刑を決める際の裁判官の判断で、減軽される可能性があることを意味します。
「刑事処罰の減軽」の効果が認められるためには、自首成立の要件を満たす必要があります。
一方で、「逮捕リスクを避けること」という効果は、自首成立の要件を満たさないような、事件発覚後の警察への任意出頭の場合でも、逮捕可能性を低くすることができると考えられます。
「逮捕」とは、原則として「証拠隠滅の防止」や「逃亡の防止」のために、身柄拘束が行われるものであり、犯人が自発的に罪を認めて警察署への任意出頭を行うことで、捜査機関側の視点からは「証拠隠滅のおそれ」や「逃亡のおそれ」が低くなり、逮捕の必要性が薄まる方向へと影響することが期待されるからです。
ただし、警察に自首することで、事件の捜査が開始され、捜査機関からの厳しい取調べを受けることが予想されます。
自首した事件であっても、逮捕される可能性が無いわけではありません。
自首を検討している人は、警察署に自首する前の時点で、刑事事件に強い弁護士に法律相談することで、自首の方法・内容や、自首に当たっての弁護士の関与方針や、その後の警察取調べの供述対応、逮捕リスクの検討などを、綿密に弁護士と話し合うことが重要となります。
神奈川県三浦市の痴漢自首案件でお悩みの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。