「卑わいな言動」について解説
今回は、多くの迷惑防止条例に存在する「卑わいな言動」の禁止規定について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは酒に酔って、女性の胸部や性器の俗称を大声で叫びながら、兵庫県内の駅構内を走りまわってしまいました。
すぐに鉄道警察隊が現れ、Aさんをなだめましたが、「俺のやっていることは何か法律に違反するのか」などと逆上し、手の付けられない状況です。
警察官は、Aさんを兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反の疑いで現行犯逮捕しました。(フィクションです)
~Aさんは何故逮捕されてしまったのか?~
確かに、女性の胸部や性器の俗称を大声で叫びながら駅構内を走り回ることを明文で禁止する法律はありません。
ただし、兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第3条の2第1項1号は、「公共の場所又は公共の乗物において」、「人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動」を行うことを禁止しています。
「卑わいな言動」とは何を意味するのでしょうか。
判例( 最高裁判所第三小法廷平成20年11月10日決定)によると、「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」をいうと解されています。
女性の胸部や性器の俗称を大声で叫ぶことは、性的なデリカシーに欠けると言わざるを得ません。
これによると、Aさんの行為は、「卑わいな言動」に該当する可能性があります。
その他、「卑わいな言動」に該当しうる行為の例として、「女性に卑わいな文章をしつこく見せる行為」、「女性にしつこくつきまとい、性的な言葉をかける行為」、「執拗に女性を凝視する行為」などが挙げられるでしょう。
~Aさんは今後どうなる?~
逮捕され、留置の必要が認められると、逮捕時から48時間以内に、Aさんの身柄が検察へ送致されます。
検察官においても取調べを行い、Aさんの身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内に、Aさんの勾留を請求するか、釈放して在宅捜査に切り替えるかを決定します。
勾留請求がなされ、勾留決定が出ると、10日間、勾留されます。
やむを得ない事由があると認められると、最長10日間、勾留が延長されます。
Aさんを勾留したまま捜査を行う場合は、勾留の満期日までに、起訴・不起訴の別が決定されます。
在宅捜査に移行した場合は、起訴・不起訴の別が決定されるまでに数か月かかることもあります。
~今後の弁護活動~
Aさんは逮捕されてしまっているので、一刻も早く外に出る方法を模索しなければなりません。
ケースの事件では、適切な弁護活動を行うことにより、勾留が付かずに釈放されることが期待できます。
適切な身元引受人を用意し、身元引受人が責任をもってAさんを監督する旨の記載された上申書を提出することにより、勾留を阻止することができるかもしれません。
勾留が付かずに釈放されれば、日常生活に戻ることができるので、今まで通りに会社に出勤することもできますし、また、学校に登校することもできます。
反対に、勾留がついてしまうと、長期間、会社や学校を無断欠勤・欠席してしまうことになるので、会社をクビになったり、進級が遅れてしまうなどのリスクが生じます。
~最終的な処分はどうなるか?~
ケースの場合、罰金刑を受けるか、不起訴処分を言い渡される可能性が高いでしょう。
不起訴処分を獲得するためには、Aさんにおいて真摯に内省を深め、カウンセリングを受けるなど、再犯防止策をとることが必要です。
弁護士のアドバイスを受けながら、有利な事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が卑わいな言動の疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。