保釈してほしい
【ケース】 Aさんは、電車の車内で痴漢事件の容疑で、鉄道警察に逮捕・勾留されました。 Aさんは、逮捕当初から一貫して痴漢行為を否認していました。 検察官は、Aさんを痴漢(迷惑防止条例違反)の疑いで地方裁判所に起訴しました。 Aさんは、釈放を望んでいます。(フィクションです。) |
1 保釈とは
保釈とは、裁判所・裁判官の定めた額の保証金の納付を条件として、勾留の執行を停止し、被告人を釈放する制度です。
保釈を求める保釈請求は、検察官に起訴された後のみ(被告人の勾留のみ)、行うことができます。
(勾留の詳細については、「痴漢・わいせつ事件で勾留」のページを参照してください。)
起訴される前の被疑者の勾留については、法律上、保釈が認められていません。
被疑者が、痴漢行為を否認している場合、「罪証隠滅のおそれ」があるとして、勾留されることが多くあります。
そして、連日、捜査機関は、被疑者の取調べを行い、自白を獲得しようとします。
他方で、被疑者の供述以外の証拠(防犯カメラの映像、被害者の供述や他の乗客の証言など)を収集し、否認している被疑者を起訴することもあります。
保釈は、起訴後でなければ請求できません。
弁護人は、早期に被疑者の身柄を解放し、検察官による起訴を回避する弁護活動に尽力します。
しかし、検察官に起訴された場合には、裁判所に対して被告人の保釈を請求します。
長期の身柄拘束は、被疑者・被告人の後の社会復帰を妨げるものであるからです。
保釈請求ができる者は、勾留されている被告人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族(被告人の両親や子ども、孫など)若しくは兄弟姉妹です。
2 保釈されるメリット
① 身柄拘束から解放される
② 職場や学校などに復帰できる可能性がある
③ 裁判の準備や打合せなどが十分にできる
④ 家族のもとに戻ることで、精神的にも安心・安定することができる
3 保釈の種類
保釈の種類として、権利保釈(必要的保釈:刑事訴訟法89条)、裁量保釈(任意的保釈:同90条)、義務的保釈(91条)があります。
(1)権利保釈(必要的保釈)
保釈請求を受けた裁判所又は裁判官は、刑事訴訟法89条各号に該当する事由がある場合を除いて、保釈を許さなければなりません(刑事訴訟法89条柱書)。
この場合の保釈を「権利保釈」といいます。
権利保釈となるためには、以下の①~⑥に該当する事由がないことが必要です。
特に、痴漢事件で被告人が否認しているような場合には、④⑤の有無が問題となることが多いと思われます。
刑事訴訟法 第89条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。 |
①被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
(一定の重大犯罪)
②被告人が前に死刑又は無期若しくは10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
(一定の重大事件での前科がある)
③被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑥被告人の氏名又は住居が分からないとき。
(2)裁量保釈(任意的保釈)
「裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。」(刑事訴訟法90条)
この場合の保釈を、「裁量保釈」といいます。
権利保釈が認められない場合でも、裁量保釈を求めることで、保釈される可能性があります。
裁量保釈については、担当する裁判官に対して、犯罪の性質や状況、加害者の経歴、行状、性格、家族関係、公判の進行状況に照らして、保釈することが適当であることを説得的に説明する必要があります。
もっとも、保釈を担当する裁判官の裁量が大きく、地域差や、事件の内容などで成否が分かれることもあります。
(3)義務的保釈
「勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、第88条に規定する者の請求により、又は職権で決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。」(刑事訴訟法91条)
この場合の保釈を、「義務的保釈」といいます。
これは、身柄拘束が不当に長くなった場合の例外的な場合の保釈です。
4 保釈保証金の金額
裁判所が保釈を許可した場合、被告人は、保釈の手続きをして、保釈保証金を実際に納付することで保釈されます。
保釈保証金の額について、法律上、具体的な金額の定めはないものの、「保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。」(刑事訴訟法93条2項)と定められています。
保釈保証金は、事件ごとに具体的に定められますが、一般的な目安としては、最低でも150万円から200万円以上になるといわれています。
保釈を求める場合、保釈保証金の額はケースバイケースであるとしか言いようがありませんが、まとまった額の現金が必要になることは間違いありません。
5 保釈請求は弁護士法人 あいち刑事事件総合法律事務所にお任せください
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所属する弁護士も刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士です。
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