【事例解説】少年による不同意わいせつ事件(中編)
16歳の少年が同級生の女子にわいせつな行為を行った事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
Aくん(16歳)は、同級生の女子生徒Vさん自宅に誘い、テレビゲーム等をして遊んでいましたが、劣情を抱いたAくんは、Vさんをソファーに押し倒し、陰部を直接弄ぶなどし、わいせつな行為を行いました。
後日、Aくんの自宅に警察官が現れ、「先日のAくんの自宅で起きたことについて聞きたいことがある。」と言われました。
(事例はフィクションです。)
前回に引き続き、少年による不同意わいせつ事件を解説いたします。
不同意わいせつにおける、「暴行」「わいせつな行為」とは
「暴行」とは、身体に対する不法な有形力の行使をいい、被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度の暴行であれば足ります。
つまりAくんが行った、Vをソファーに押し倒す行為は、上記の「暴行」に該当すると考えられます。
「わいせつな行為」の具体例として、陰部に手を触れたり、手指で弄んだり、自己の陰部を押し当てることや、女性の乳房を弄ぶことをいいます。
事例における「陰部を直接弄ぶ」行為は、「わいせつな行為」の典型例ということができるでしょう。
Aくんは、暴行を用い、Vさんにわいせつな行為を行ったということから、Aくんに不同意わいせつ罪が成立すると判断される可能性が極めて高いと思われます。
不同意性交等未遂について
Aくんは、Vさんと強制的に性交しようとしたが、何らかの理由で性交する前に止めた、という見方も考えられるところです。
この場合は、不同意性交等罪の未遂の成否が検討されることになります。
不同意性交等罪も不同意わいせつ罪と同じように前回記載の8つの類型に該当し
「同意しない意思を形成し、表明し、全うすることが困難な状態にさせ、またはその状態にあることに乗じて、性交等をしたもの」が成立要件となります。
もし、AくんがVさんと強制的に性交することを目的としてVさんをソファーに押し倒したのであれば、不同意性交等未遂の罪が成立する可能性が高いということになります。
取調べにはどう対応すればよいか?
取調べにおけるAくんの供述は、Vさんと強制的に性交する目的の有無を左右する重要な証拠になります。
取調べで「Vさんを押し倒したとき、Vさんと性交することも少しは考えた。」旨の調書がとられると、Aくんの嫌疑が不同意性交等未遂罪に固定される可能性が高まります。
不同意わいせつ罪よりも、不同意性交等未遂の方が重大な犯罪であるため、Aくんにより重い処分がなされる可能性が高まります。
取調べ前に、Aくんの認識を前提に、どのように供述すればAくんにとって不利にならずに済むかについて、弁護士から助言を受けることをおすすめします。