痴漢事件における弁護活動
痴漢事件における弁護活動
今回は、痴漢事件における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ケース~
Aさんは、兵庫県明石市内を走行する特急電車に乗車中、隣で睡眠していた女性Vと接吻してしまいました。
Vは熟睡していたため気付きませんでしたが、検札のために隣車両からやってきた車掌に見つかってしまい、警察に通報されてしまいました。
Aさんは次の停車駅で降ろされ、準強制わいせつ罪の疑いで鉄道警察隊に引き渡されました。(フィクションです)
~ケースのような痴漢はどのような犯罪が成立するか?~
電車内で他人に卑わいな行為を行っている、という点で、「痴漢」の一種と考える方もおられるかと思います。
「痴漢」というのは性的な嫌がらせを意味する言葉なので、「痴漢」の一種という点では間違いは無いと思われます。
しかし、法令上、「痴漢罪」という犯罪はありません。
一般に「痴漢」と呼ばれる行為を行うと、各都道府県の制定する迷惑行為防止条例違反の罪、または、強制わいせつ罪などの嫌疑をかけられることになります。
ケースの場合は、準強制わいせつ罪に問われる可能性が高いと思われます。
準強制わいせつ罪は、「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為を」する犯罪です(刑法第178条1項)。
法定刑は6月以上10年以下の懲役となっております。
準強制わいせつ罪における「心神喪失」とは、意識喪失、高度の精神障害など精神的な障害によって性的行為につき正常な判断ができない状態にあることをいいます。
Vは熟睡していましたが、この睡眠状態は、本条の「心神喪失」に該当します。
「抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由で、物理的・心理的に抵抗することが不可能または著しく困難な状態にあることをいいます。
「わいせつな行為」の典型例として、
・陰部に手を触れる、陰部を弄ぶこと
・自己の陰部を押し当てること
・女性の乳房を弄ぶこと
が挙げられますが、「接吻」も「わいせつな行為」に該当するとした裁判例が存在します(東京高等裁判所昭和32年1月22日判決)。
ケースのAさんは、Vさんの睡眠中、性的行為につき正常な判断ができない状態にあることに乗じて同女に接吻していると言えます。
そうすると、人の心神喪失に乗じ、わいせつな行為をしたものと評価することができ、準強制わいせつ罪に当たることが見込まれるでしょう。
~逮捕後、Aさんはどうなるか?~
逮捕された後、取調べを受け、留置されずに釈放される場合もありますが、準強制わいせつ罪が比較的重い犯罪であることを考慮すると、逮捕され、さらに勾留される可能性が低くないと思われます。
逮捕・勾留されると、最長23日間も身体拘束を受けることになります。
23日間も会社や学校を無断欠勤・無断欠席すると、Aさんの社会生活にも悪影響(会社を解雇される、学校で進級できなくなるなど)が生じます。
そのため、できるだけ早く弁護士を頼み、一刻も早く留置場の外に出られるよう活動しなければなりません。
~ケースの事件で考えられる弁護活動~
(勾留を防ぐ活動、勾留を争う活動)
勾留の阻止に成功すれば、そのまま釈放されるので、逮捕から勾留までの期間である3日程度で外に出ることができます。
また、勾留されてしまった場合には、勾留決定を争う(準抗告)、勾留の取消を請求することも考えられます。
(被害者との示談)
被害者と示談を成立させることも重要です。
示談とは、通常、被害者に金銭を支払うことによって、被害者に生じさせた損害を賠償し、謝罪することをいいます。
示談が成立すれば、当事者間で事件が解決したものとして、釈放される可能性が期待できます。
もっとも、Aさんは留置場の中にいるので、示談交渉は弁護士に任せることになります。
弁護士が警察や検察官に被害者情報を提供するよう要請し、応じてもらえれば、示談交渉に着手することができます。
示談が成立すれば、検察官に、Aさんにとって有利な事情として考慮してもらえることが期待できます。
検察官が不起訴処分を行えば、Aさんは裁判にかけられずに済みます。
この場合は、有罪判決を受けることもないので、前科を付けることなく事件が解決したことになります。
弁護士のアドバイスを受けながら、よりAさんにとって有利な事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が準強制わいせつ事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
(無料法律相談はこちら)