痴漢(強制わいせつ罪)で逮捕・供述の信用性を争い無罪主張

2020-02-08

痴漢(強制わいせつ罪)で逮捕されたものの,被害者の供述の信用性を争い無罪主張をするケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

埼玉県和光市に住むAは、通勤ラッシュ時の電車内において、近くにいたV女(18歳)の下着の中に手を入れわいせつな行為を行ったとして、埼玉県朝霞警察署の警察官は,Aを強制わいせつの疑いで逮捕した。
なお、Aは一貫して上記犯行を否認している。
Aの家族は,痴漢事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~痴漢行為における強制わいせつ(刑法犯)と迷惑防止条例違反の区別~

本件では、Aは強制わいせつ罪で逮捕されていますが、各都道県が定めるいわゆる「迷惑防止条例」が痴漢行為の処罰を定めていることから、条例によって逮捕等されるのではないかと思う方も多いかもしれません。
では、痴漢行為が強制わいせつ罪に当たるか、迷惑防止条例違反にとどまるかはどのように判断されているのでしょうか。
この点、強制わいせつ罪を規定する刑法176条前段は、「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する」ものとしています。
つまり、強制わいせつ罪に該当するためには、「わいせつな行為」を「暴行又は脅迫」を手段として行う必要があるのです。
しかし、例えば着衣の上から被害者の身体に触れるような行為は、「暴行又は脅迫」に該当するとは言い難く、また「わいせつ行為」とまでもいえないと考えられています。
したがって、上記のような行為にとどまるのであれば迷惑防止条例違反となるのが通常だと思われます。
これに対し、直接に乳房や陰部等を触る行為は「わいせつな行為」であることは明らかであり、被害者の意思に反していれば「暴行又は脅迫」の要件も実務上は比較的緩やかに認められる傾向にあるといわれています。
本件では、AはV女の下着の中にまで手を入れており、陰部に触れていると考えられるため、迷惑防止条例違反ではなく刑法犯(強制わいせつ罪)として逮捕されているのです。

~被害者の供述の信用性を争う~

本件では、AはVに対する痴漢行為を逮捕後も一貫して否認しています。
そして、痴漢事件においては、物的証拠がなく被害者の供述のみが主要な証拠であることも少なくなく、その場合裁判等において被害者の供述の信用性が最も重要な争点になると考えられます。
刑事法学において、供述証拠は「知覚→記憶→叙述→表現」という各過程を辿るため裁判所の事実認定を誤らせる危険性のある証拠として位置付けられています。
だからこそ、刑事訴訟法では、この各過程に誤りがないか等を吟味することのできない伝聞証拠(いわゆる又聞き)は原則として証拠とすることができないとされています(刑訴法320条1項参照)。
例えば、供述証拠における人間の記憶の面に着目するなら、心理学などの分野において人間の記憶というものがいかに簡単に外的・内的な影響によって変容してしまうかという研究には枚挙に暇がありません。
したがって、弁護士としては、法律学のみならず他分野の知識も援用しつつ、供述証拠の危険性を正しく認識し、その信用性を慎重に吟味する必要があるといえます。

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