痴漢事件の示談交渉について

2020-02-18

今回は、痴漢事件を起こしてしまった場合に有効な示談交渉について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

Aさんは、東京都日野市内を走る電車内において、女性Vの太ももを触るなどしたところ、Vに腕を掴まれてしまい、警視庁日野警察署に引き渡されました。
警察では、「少なくとも2、3日泊ってもらう」と言われ、困り果てています。
どうすればよいのでしょうか。(フィクションです)

~「痴漢罪」という罪名の犯罪はない~

唐突ですが、いわゆる「痴漢」をするとどのような犯罪が成立するのでしょうか。
ちなみに、「痴漢罪」という罪名の犯罪が成立することはありませんし、「痴漢罪」を法定する法令もありません。
もちろん、いわゆる「痴漢」行為を行うと、処罰の対象となりえます。
どのような犯罪が成立し得るのでしょうか。

(犯行を行った場所の自治体の制定する迷惑防止条例違反の罪)
ケースの場合はおそらくこのパターンでしょう。
Aさんが犯行を行ったのは東京都日野市内なので、東京都が制定する迷惑防止条例を参照する必要があります。
以下、関係する条文を引用します。

東京都迷惑防止条例
第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。

Aさんの行為は、東京都迷惑防止条例第5条第1項1号に違反するものと考えられます。
上記に違反し、有罪判決を受ける場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

(強制わいせつ罪)
痴漢行為の態様が悪質だと、迷惑防止条例違反の罪ではなく、「強制わいせつ罪」の嫌疑をかけられる場合があります。
強制わいせつ罪の法定刑は、迷惑防止条例違反の罪よりはるかに重く、6月以上10年以下の懲役となっています(刑法第176条)。

(暴行罪)
稀に暴行罪の嫌疑をかけられる場合もあります。
殆どの場合は、上記の2つで対応できますが、痴漢の態様や、県境の事件でどこの自治体の条例を適用すべきか判然としない場合などにおいて、例外的に、暴行罪が適用される場合があります。
暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料となっています。

~Aさんに必要な弁護活動~

Aさんには、①早く外に出られるようにすること、②被害者と示談をすること、③より軽い処分の獲得に向けた弁護活動が必要です。
そのためには、Vと示談をすることが大変重要になります。

「示談」とは、加害者と被害者との間でなされる、事件解決に向けた民事上の合意をいいます。
通常、加害者から被害者に対し、示談金を支払う約束をし、示談書を作成します。
加害者である被疑者本人でも示談交渉を行うことは可能ですが、ケースのAさんは留置場の外に出られないので、Vと交渉することができません。
また、在宅事件として進行している場合であっても、「被害者と接触し、罪証隠滅行為をしている」などと判断されると、逮捕されてしまうリスクを高めることになります。
そもそも被害者とは会ってもらえないかもしれません。

そこで、弁護士を被害者との間に立たせることにより、上記の問題をクリアすることができます(ただし、被害者の意思が固ければ、弁護士であっても面会してもらえない可能性があります)。

被害者が、Aさんを許す旨の条項(「宥恕条項」といいます)を入れてくれたり、被害届、告訴状を取り下げてくれると、よりAさんにとって有利に事件を解決できる可能性が高まります。

まずは、接見にやってきた弁護士からアドバイスを受け、事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が痴漢事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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