【事例解説】受験当日の受験生への痴漢
【事例解説】受験当日の受験生への痴漢
受験会場に向かう受験生に対して電車内で行った痴漢行為について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例紹介】
「Aさんは、大学入学共通テストが行われる日の朝、混雑した電車内で、共通テストの受験生であるVさんを見かけました。
Aさんは、受験当日なら受験生に痴漢しても被害届を出されることは無いだろうと考えて、混雑した電車内でVさんに近づき、Vさんの左後ろからスカート越しにVさんのお尻を手で撫でました。
突然、Vさんの近くに移動したAさんのことを不審に思って様子を観察していたWさんが、お尻を撫でているAさんの手を掴んで、『痴漢してますよね』と言って、次の停車駅に降ろしました。
Aさんは、駅のホームに駆け付けた警察官に逮捕されました。」
(この事例はフィクションです)
【受験生に対する痴漢被害を防止するために警察が警戒を強めています】
令和5年1月14日、15日は大学入学共通テストが全国各地で開催されます。
共通テスト当日は、大勢の受験性が電車に乗って移動することが予想されますが、近年、SNSなどで受験当日に受験生に対して痴漢行為をしても、これから大事な受験に向かう受験生は痴漢の被害を訴え出ないだろうと考えて「共通テスト当日は痴漢のチャンス」などの言葉を用いて、受験生に対する痴漢行為を呼びかけるような投稿が目立つようになってきています。
各地の警察は、こうした状況を受けて、受験当日の痴漢被害を防止するために警戒を強めています。
たとえば、警視庁では、1月11日から15日までの期間を「痴漢撲滅キャンペーン」として、期間中、警察官が主要駅や電車内での警戒を強化するとしています。
【電車内での痴漢行為は何罪になる?】
ところで、電車内での痴漢行為は、痴漢行為として具体的にどのような行為をしたのかということで問われる犯罪が異なります。
事例のAさんのように、服の上からお尻などの相手の身体に触れる行為は、各都道府県が定める迷惑行為防止条例に違反する可能性が高いと言えるでしょう。
たとえば、東京都迷惑行為防止条例の場合、同条例5条柱書において、
「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。」
と規定し、「次に掲げるもの」として同条1号において、
「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。」
と規定しています。
事例のAさんのように電車内でVさんのお尻をスカート越しに手で撫でるという行為は、「公共の乗物」において、「衣服…の上から…人の身体に触れる」事に当たると考えられますし、そのような行為によってVさんは恥ずかしい思いをしている可能性が高いでしょうから、Aさんが東京都で事例のような痴漢行為をしたのであれば、東京都迷惑行為防止条例5条1項1号に違反していると考えられるでしょう。
東京都迷惑行為防止条例5条1項1号に違反した場合、同条例8条1項2号によって6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
なお、取り上げた事例と異なって、AさんがVさんの下着の中に手を突っ込んで陰部を直接指で弄ぶといった痴漢行為をした場合、Aさんの痴漢行為は刑法176条の強制わいせつ罪に当たる可能性があります。
強制わいせつ罪の法定刑は、6カ月以上10年以下の懲役刑となっていて、罰金刑が定められていませんので、東京都迷惑行為防止条例違反の場合よりも罪が重いと言うことができるでしょう。
【痴漢の疑いで警察の捜査を受けてお困りの方は】
痴漢行為で警察の捜査を受けてお困りの方は、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。
痴漢行為を認める場合の刑事弁護活動としては、被害者の方と示談を締結することが重要になるでしょう。
受験当日に受験生に対する痴漢行為をあえて行った場合には、被害者の方の犯人に対する処罰感情が通常よりも強いでしょうから示談交渉も難航する可能性がありますが、示談経験が豊富な弁護士が粘り強く交渉をすることで、被害者の方と示談を締結することも不可能ではない場合があるでしょう。
また、受験当日は受験生が同じタイミングの電車を利用することで、通常よりも電車内が混雑していることが予想されますが、その場合に、痴漢をしていないのに痴漢の犯人と間違えられた場合にも弁護士に相談されることをお勧めします。
痴漢に間違われたというトラブルに巻き込まれた際に、厄介ごとが早く解決するならと安易にやってもいない痴漢を認めてしまうと痴漢していないにも関わらず痴漢について前科が付く場合もあり得ます。
そのような冤罪を回避するためには、弁護士に相談して警察での取調べに対するアドバイスなどを受けることが有益になるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
痴漢の疑いで警察の捜査を受けてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。