痴漢事件で示談交渉

2020-12-26

痴漢事件で示談交渉

~ケース~
Aさんは、神奈川県横浜市中区内の路線バスに乗車していた時、目の前の女性Vの臀部を触ってみようと考えました。
Vの臀部に手を伸ばし、着衣越しに臀部を撫でたところ、Vは悲鳴をあげ、警察を呼ばれてしまいました。
Aさんは駆け付けた神奈川県山手警察署の警察官に神奈川県迷惑行為防止条例違反の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです)

~痴漢をするとどのような嫌疑をかけられるか?~

痴漢罪」という罪名の犯罪類型はありません。
一般的に「痴漢」と呼ばれる行為を行うと、①各都道府県が制定する迷惑防止条例違反の罪、②強制わいせつ罪(刑法第176条)の成否が検討されます。

Aさんは神奈川県迷惑行為防止条例違反の疑いで現行犯逮捕されています。
迷惑防止条例は、それぞれの都道府県により定められています。
神奈川県迷惑行為防止条例第3条1項2号は、
「公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗っている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法」
で行う
「衣服その他身に着ける物(以下、「衣服等」という。)の上から、又は直接に人の身体に触れること」
につき、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処すると定めています。
Aさんは迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されていますが、もし、Vの下着の中に手を入れ、陰部をもてあそんだなどという場合には、痴漢の態様が「わいせつ」に至ったとして、強制わいせつ罪の疑いで逮捕される可能性があります。
強制わいせつ罪の罰則は6か月以上10年以下の懲役のみなので、迷惑防止条例違反の罪よりもかなり重いと言えます。
一般的に、痴漢の内容が着衣の上から臀部を撫でるに留まった場合には、迷惑防止条例違反の罪の嫌疑をかけられることが殆どのようです。

~示談を行い痴漢事件の解決を目指す~

逮捕されたAさんは今後どうなるのでしょうか。
逮捕された場合は、被疑者の弁解を聞き、取調べを行ったあと、逮捕時から48時間以内に事件が検察に送致されます。
事件と身柄の送致を受けた検察官は、被疑者を取調べた後、24時間以内に被疑者の勾留を請求するか、釈放するか、あるいは起訴するかを決めなければなりません。
勾留請求を受けた裁判官が勾留決定を行うと、被疑者は10日間外に出ることができなくなります。
さらに、やむを得ない事由があるとして、勾留延長をされた場合には、さらに最長10日間身体拘束を受けることになります。
被疑者が勾留されている場合、検察官は勾留の満期日までにAさんについての処分(起訴、不起訴、あるいは処分を保留して釈放)を決めなければなりません。

もし、早期(勾留請求前)に示談が成立していればどうでしょうか。
勾留は、①勾留の理由があり、②刑事訴訟法第60条第1項の要件を満たし、かつ、③勾留の必要性がある場合に行うことができます。
示談が成立していれば、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがないなど、勾留の理由に欠けて勾留の要件を満たさないと判断され、検察官が勾留請求をしない、あるいは裁判官が勾留請求を却下する可能性が高まります。
仮に勾留されたとしても、示談が成立すれば、検察官の指揮で釈放(任意釈放)されたり、裁判官が勾留を取り消すことで身柄が解放されることもあります。
早期の示談は、早期の身柄解放、社会復帰にもつながりうる、ということです。

また、検察官の処分との関係でも、示談の成立はAさんに有利な影響を与えることが期待できます。
前述したことと重なりますが、刑事訴訟法第248条は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」としており、検察官に起訴又は不起訴処分のいずれを行うかにつき裁量を与えています(「起訴便宜主義」といいます)。
これによると、検察官は、被疑者の犯罪を立証できる用意がある場合であっても、上記の要素を考慮し、不起訴処分を行うことができるということです。
示談は、犯罪後の情況として不起訴処分の獲得の可能性を高めることができるので、是非とも検察官の処分がなされるタイミングまでに成立させておきたいところです。

~弁護士に示談交渉を依頼~

逮捕されている場合には、本人は外で活動することができないので、通常、弁護士示談交渉を依頼することになります。
弁護士は、法律の専門家として、Aさんの利益のために、より有利な示談を成立させるよう努めます。
例えば、金額面で不当に高額にならないよう交渉する他、事件について口外しない条件や、宥恕(寛大な処分を求めるという被害者の意思)を示談に盛り込みます。

ご身内の方が、痴漢事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に在籍している弁護士は、全員、刑事事件を専門とする弁護士です。
まずは、初回接見(有料)の申し込みにより、事件を把握した上で、痴漢事件の解決の道筋を検討し、依頼者の方へ助言させていただきます。

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