痴漢で逃げることは得策か?

2019-06-08

痴漢で逃げることは得策か?

東京都八王子市に住むAさんは、出勤途中の満員電車内で、前にいた女性Vさんから「今、痴漢しましたよね?」と言われました。Aさんは、何のことか分からず「やってません」と答えましたが信じてもらえず、周囲にいた男性2名と共に、次の停車駅で降ろされてしまいました。Aさんは、さらにVさんに「嘘はだめですよ。」「正直に話した方がいいですよ。」「でないと警察呼びますから。」と言われたことから、「逮捕されたら面倒なことになる」と思い、その場から逃げ出しました。Aさんは、改札機を通れば駅員に見つかると思い、線路内におり、そのまま走ってフェンスを乗り越えました。しかし、後日、Aさんは警視庁南大沢警察署の警察官に東京都迷惑行為防止条例違反逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

痴漢を疑われた場合、一刻も早くその場から出だしたいという気持ちになられることは理解できます。しかし、そのことが本当に得策なのか考えてみたいと思います。

~ 現場から逃げると逮捕のリスクが高まる ~

逮捕は、その人が、罪を犯したを疑うに足りる相当な理由があり、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれが認められる場合にできるものです。逮捕する捜査機関側からすれば、現場から逃げる→罪を認めない→罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれあり、という思考回路をとりがちです。したがって、残念ながら、現場から逃げることは逮捕のリスクを高めることに繋がってしまいます。また、その後の勾留においても同様です。

* 逮捕された場合の周囲の反応は? *

あくまで逮捕段階では

無罪の推定

が働いています。ですから、逮捕=有罪=罪を犯した、というわけではないのです。しかしながら、法律の素人である一般の方々は「逮捕」という言葉に敏感に反応し、逮捕=有罪=が罪を犯した、と考えてしまう嫌いがあります。したがって、仮に、刑事裁判を受ける前に釈放されたとしても、痴漢というレッテルと張られ、

会社にいづらくなる→会社を辞める

ということにもなりかねません。

~ 他の罪に当たるおそれも ~

線路に立ち入った場合は鉄道営業法の37条に違反するおそれがあります。鉄道営業法は明治時代に作られた法律で、規定が古くて読みづらいですがここでご紹介します。

鉄道営業法37条
 停車場其ノ他鉄道地内ニ妄ニ立入リタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス

つまり、鉄道地内にみだりに立入った場合は科料(1000円以上1万円未満の金銭の徴収)に処される、と書かれてあります。科料も立派な刑罰の一つです。「十円」というのは鉄道営業法制定当時の経済事情を考慮して決められたことから、現在は罰金等臨時措置法により金額が修正されています。なお、新幹線の敷地内に立ち入った場合は、鉄道営業法ではなく、新幹線特例法(正式名称は「新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法」)の適用を受け、科料にとどまらず、1年以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

その他、立入り関連で成立し得る犯罪としては、刑法に定める往来危険罪(刑法125条1項)や過失往来危険罪(刑法129条1項)です。前者の法定刑は2年以上の懲役、後者は30万円以下の罰金です。いずれも、抽象的に、「電車の往来の危険を生じさせた」ことが要件となります。この点、鉄道営業法ではこの危険を生じさせなくても、立ち入っただけで成立します。

~ 逃げる以外の方法は? ~

これまで見てきたように、現場から逃げることは様々なリスクを生じさせるといえそうですから、得策とはいえません。では、どうすればいいかといえば、まずは

「やってない」

ときっぱり主張することでしょう。駅員や警察官からは、あなたに痴漢を認めさせようといろいろ説得されることがあるかと思います。しかし、本当にやっていないなら、正々堂々と「やっていない」と言っていいですし、言わなければなりません。ここであやふやな回答をしてしまうと、後々不利になったり、面倒なことになりかねません。

そして、最悪逮捕されてしまった場合は、痴漢事件の経験のある弁護士に助言を求めましょう。

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