【事例解説】19歳大学生による電車内での痴漢事件
19歳の大学生が電車内で痴漢をしたとして警察に逮捕されたケースについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例紹介
「19歳の大学生のAさんはJR埼京線の電車内で、会社員の女性Vさんの太ももやお尻付近を衣服の上から手で撫でました。
Vさんが、痴漢中のAさんの手を掴んで、『痴漢してましたよね』といって、次の駅で一緒に降りることになりました。
Vさんが駅員に事情を話したところ、駅員が警察に通報しました。
Aさんは、駆け付けた警察官によって逮捕されました。」
(この事例はフィクションです)
電車内で痴漢をするとどのような罪に問われる?
事例のAさんのように、電車という「公共の乗物」において、太ももやお尻といった部分を服の上から撫でるという痴漢行為は、各都道府県が定める迷惑行為防止条例に違反する可能性があります。
埼京線は東京都と埼玉県を結ぶ路線になりますが、電車が東京都内を走行中に痴漢をしていた場合は、東京都迷惑行為防止条例5条1項1号に違反することになると考えられます。
東京都迷惑行為防止条例5条1項1号に違反した場合、同条例8条1項2号によって、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、痴漢行為が令和5年7月13日に施行された「不同意わいせつ罪」の要件を満たす場合には条例に優先して不同意わいせつ罪が成立することになります。
不同意わいせつ罪が成立した場合は、6月以上10年以下の懲役が科されることになり、迷惑防止条例違反の場合より重い刑罰が科せられる可能性が高くなります。
19歳の大学生が電車内で痴漢行為をするとどうなるのか
事例のAさんは19歳の大学生です。
現在、成人年齢は18歳となっていますので、Aさんは日常生活では成人として扱われることになりますが、少年法では20歳未満の者を「少年」と定義して(少年法2条1項)、少年法の適用対象にしています(このうち、少年法では18歳、19歳の少年を「特定少年」と位置づけています)。
そのため、Aさんの痴漢事件については少年法が適用されて少年事件として取り扱われることになります。
少年事件として取り扱われることになると、通常の刑事事件のように検察官が起訴するかどうかを判断するわけではなく、検察官から事件の送致を受けた家庭裁判所が審判を開いて少年の最終的な処遇を決定することになります。
もっとも、少年事件から通常の刑事事件へと切り替わる場合もあります。
検察から事件の送致を受けた家庭裁判所から、再び検察へと事件を送致する場合のことを「逆送」と言います。
逆走がなされると、通常の刑事手続きと同様に、検察官が起訴するかどうかの判断を行うことになります。
どのような場合に逆走がなされるかについては少年法に規定されていますが、そのひとつに年齢超過による逆送があります。
先ほども述べた通り、少年法における「少年」とは20歳に満たない人のことを言いますので、痴漢の疑いで警察に逮捕されてからの捜査機関による捜査や、事件が家庭裁判所に送致されてから審判開始までになされる調査の間に少年が20歳を迎えると年齢超過を理由に逆送がなされることになります。
そのため、例えば、事例のAさんが、逮捕された日の1か月後に誕生日を迎えて20歳になるという場合は、審判開始時の年齢超過を理由に逆送がなされる可能性があります。
ご家族が痴漢で逮捕されてしまってお困りの方は
ご家族が痴漢の疑いで警察に逮捕されてしまったら、いち早く弁護士に依頼して初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
特に、今回の事例のように19歳の方が痴漢事件を起こした場合、いつ20歳を迎えるのかということになって、その後の流れが変わってきますので、初回接見に行ってもらった弁護士から事件の見通しや今後の流れについてしっかりとしたアドバイスを貰われることが重要になるでしょう。