【報道解説】電車内での痴漢行為 被害者女性が男を現行犯逮捕

2023-08-14

電車内での痴漢事件で、被害者の方が痴漢の容疑をかけられている方を現行犯逮捕したという報道について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

報道紹介

JR神戸線の電車内で隣に座っている20歳の女性わいせつな行為をしたとして大阪府藤井寺市の無職のが2日、現行犯逮捕されました。
不同意わいせつの疑いで逮捕されたのは大阪府藤井寺市に住む無職の56歳の男です。
警察によりますと男は2日午後11時40分ごろ、JR三ノ宮駅からJR元町駅の間を走行中の電車内で、隣に座っていた20歳の女性のふともも触った疑いが持たれています。
被害に遭った女性がJR須磨駅で男に声を掛け、現行犯逮捕し、110番通報を受けて駆け付けた警察官に引き渡したということです。
調べに対し男は容疑を認めているということで、警察が調べを進めています。
(2023年8月3日サンテレビで配信された報道より引用)

電車内での痴漢行為が不同意わいせつ罪に当たる場合

報道の男性は、電車内で女性の太ももを触ったとして不同意わいせつ罪の疑いで逮捕されています。
刑法176条に規定されている不同意わいせつ罪というのは、2023年7月13日から新しく規定されている罪で、これまで強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪と呼ばれていた犯罪が改正されたものになります。

刑法176条1項では、不同意わいせつ罪が成立する場合として、大きく次の3つの要件を満たす必要があります。

(1)下記①~⑧に掲げる行為又は、①~⑧に類する行為・事由があること
(2)(1)によって同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせるか、又はその状態にあることに乗じること
(3)わいせつな行為をしたこと

そして、(1)の要件である①から⑧に掲げる行為・事由は、具体的には次の8つです。
①暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
②心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
③アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
⑤同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
⑧経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

これらの(1)~(3)の要件を満たした場合には、不同意わいせつ罪として、6か月以上10年以下の拘禁刑が科される可能性があります。

なお、不同意わいせつ罪が規定されている刑法176条には、2項と3項も規定されています。
刑法176条2項では、「行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じてわいせつな行為をした」場合も、不同意わいせつ罪が成立するとしています。
刑法176条3項では、「16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした」場合も不同意わいせつ罪が成立すると規定していますが、わいせつ行為の被害者の方の年齢が13歳以上16歳未満である場合には、わいせつ行為をした人と被害者の方との年齢差が5歳以上離れている場合のみ不同意わいせつ罪による処罰の対象になります。

現行犯逮捕は警察以外にもできる?

ところで、報道を読むと、今回の痴漢事件では、痴漢の被害者の方が痴漢の容疑がある男性を現行犯逮捕していますが、この部分を読んで、逮捕は警察しかできないのではないのかと思われる方がいらっしゃるかもしれません。
確かに、事前に逮捕状の発付を受けて行う通常逮捕の場合には、「検察官」、「検察事務官」、「司法警察職員」のみに逮捕する権限が認められています(刑事訴訟法199条1項参照)。
ただし、今回取り上げた報道では、通常逮捕ではなく現行犯逮捕がなされています。
現行犯逮捕の場合には、通常逮捕と異なって「何人でも」逮捕することができます(刑事訴訟法213条参照)。
「何人でも」現行犯逮捕できるということは、誰でも現行犯逮捕出来るということを意味していますので、例えば、警察ではない一般の人である被害者の方はもちろん、事件を目撃していた方でも、適法に現行犯人逮捕を行うことができます。

ご家族が電車内での痴漢行為を理由に逮捕されたら

突然、ご家族が痴漢の疑いで警察に逮捕されたということを知った場合は、いち早く弁護士に依頼して初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
この初回接見によって、どのような嫌疑で逮捕されたのか、逮捕された方が罪を認めているのか、今後どのような手続きで事件が処理されるのかといったことについて知ることができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は痴漢事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
ご家族が痴漢の疑いで突然警察に逮捕されてしまってお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

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