【報道解説】眠っている女性に対する痴漢で準強制わいせつ罪と威力業務妨害罪で逮捕

2022-12-13

【報道解説】眠っている女性に対する痴漢で準強制わいせつ罪と威力業務妨害罪で逮捕

電車内で眠っていた女性に痴漢行為をした後で線路内に逃亡したとして、準強制わいせつ罪威力業務妨害罪逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「電車内で女性の下半身を触った後、駅員に引き渡されそうになって線路内に逃げたとして、兵庫県警明石署は26日、準強制わいせつ威力業務妨害の疑いで、神戸市兵庫区の無職の男(47)を逮捕した。
逮捕容疑は9月28日深夜、JR神戸線神戸-明石間を走行中の下り新快速の車内で、座席で寝ていた女性(21)の下半身を触るなどした上、到着した明石駅で逃げるため、線路内に立ち入るなどした疑い。調べに容疑を認めているという。
同署によると、男は女性に気付かれ、明石駅に到着するまで腕をつかまれ一時確保されていた。
しかし到着後、女性が男を連れて駅員がいる改札口に向かおうとしたところ、男が振り払ってホームの先端部へ。
高さ約1メートルの柵を乗り越えて高架の線路内に侵入し、隣接する駐輪場の屋根づたいに逃げたという。
周囲の防犯カメラ映像などから男が浮上したという。」

(令和4年10月27日に神戸新聞NEXTで配信された報道より引用)

【電車内での痴漢行為は何罪になる?】

電車内という公共の場所で、被害者の方の身体を触る行為は一般的に「痴漢」と呼ばれていますが、痴漢行為はどのような状況でどのように身体を触ったのかということで、成立する犯罪が異なります。
例えば、混雑する電車内で自分の前に立っていた女子高生のお尻をスカート越しに手のひらで触れたという痴漢行為であれば、各都道府県が定める迷惑行為防止条例違反となると考えられます。
迷惑行為防止条例違反の場合、どのような罰が科されるかは各都道府県によって異なります。
兵庫県の場合は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります(兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例15条1項)。

電車内での痴漢行為は、このような迷惑行為防止条例違反になる場合の他に、刑法176条が規定する強制わいせつ罪や刑法178条が規定する準強制わいせつ罪が成立する場合があります。
13歳以上の人を被害者とする強制わいせつ罪が成立するためには、被害者の意思に反してわいせつな行為を行うに足りる程度の暴行を加えた上で、わいせつな行為を行う必要がありますが、電車内で被害者の方の下着の中にまで手を入れて陰部に直接触って指を入れたという場合は、その行為自体が暴行でもあり、わいせつな行為でもあると考えられますので、この場合は、強制わいせつ罪が成立することになるでしょう。

これに対して、被害者の方がわいせつな行為を認識できない状態である抗拒不能の状態のときにわいせつな行為をした場合には、刑法178条の準強制わいせつ罪が成立することになります。
電車内で被害者の方が熟睡している際に、被害者にキスをしたり、服の上から陰部やお尻を撫でまわしたりなどのわいせつな行為を行えば、準強制わいせつ罪が成立することになるでしょう。
取り上げた報道では、逮捕された男性が、被害者の方が寝ている隙に、被害者の方の下半身を触ったとのことですので、準強制わいせつ罪の疑いで逮捕されたものと考えられます。

なお、強制わいせつ罪準強制わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の懲役刑となっています。

【痴漢に気が付かれて線路内に立ち入って逃走すると?】

電車の運行を止めてしまうことは、電車を運行する会社の業務妨害することになります。
このように業務妨害したときに問われる罪として、刑法には偽計業務妨害罪(刑法233条)と威力業務妨害罪(刑法234条)の2つの犯罪を規定しています。
どちらの業務妨害罪が成立するかは業務妨害した手段・方法が「偽計」か「威力」のどちらが用いられたのかということで決まることになります。

偽計」か「威力」の区別については様々な考え方があるのですが、業務妨害を非公然に行えば「偽計」で公然的に行うと「威力」であるとする考え方があります。
この考えによると、痴漢に気がつかれて捕まることを避けるために線路内に立ち入って電車の運行を一定時間止めてしまうという行為は、公然的に業務妨害しているといえますので、威力業務妨害罪が成立することになるでしょう。

なお、威力業務妨害罪の法定刑は、偽計業務妨害罪の法定刑と同じで3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。

【痴漢に気づかれて逃げてしまって不安な方は】

電車内での痴漢に気が付かれて逃走したものの、後で事件が報道されていることを知って不安に思っている方は、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士に相談することで、自分が行った痴漢がどのような罪に問われるのか、その場から逃走した際に他の犯罪が成立していないかといったことや、今後の事件の見通し、警察に出頭することのメリットなどについてアドバイスを貰うことができますので、今抱えている不安な気持ちを解消することが期待できます

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
電車内の痴漢をしてその場から逃走して不安な方や、痴漢以外にも罪に問われるのではないかと不安に思っている方などは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

Copyright(c) 2018 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 All Rights Reserved.