【事例解説】医師が電車内で痴漢をしたとして逮捕(前編)
医師が電車内で痴漢をしたとして逮捕された事例について前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
愛知県内の病院に医師として勤務するAさんは通勤途中の電車内で、10代の女性に「痴漢をしましたよね」と腕をつかまれ電車を降ろされました。
しかし、Aさんには痴漢をした覚えはなかったため、痴漢はしていないと否定してその場から逃走しました。
後日防犯カメラの映像からAさんが特定され、後日逮捕されてしまいました。
Aさんが逮捕されて困惑したAさんの妻は、状況を知るために弁護士に依頼して初回接見に行ってもらうことにしました。
【痴漢をした場合は何罪に?】
電車内での痴漢行為については2023年の刑法改正により新設された不同意わいせつ罪に問われる可能性が高いです。
不同意わいせつ罪とは、刑法176条(出典/e-GOV法令検索)に定められており、同176条所定の事由により、「同意しない意思を形成、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした」という犯罪です。また、その刑罰として「六月以上十年以下の拘禁刑」が定められています。
この罪は、これまでの強制わいせつ罪で処罰対象となっていた暴行や脅迫を用いたわいせつ行為だけでなく、被害者が行為に同意していない状況でのわいせつ行為も処罰対象としています。痴漢行為はまさしく被害者が行為に同意していない状況でのわいせつ行為の典型といえるため、今回の事例でも事件化した場合、不同意わいせつ罪で捜査が進む可能性が高いでしょう。
【医師免許を持つ者に前科が付いてしまうと】
医師免許等について定める医師法の第7条1項3号および第4条3号は、「罰金以上の刑に処せられた者」について、厚生労働大臣が医師免許の取消しをすることができる旨を定めています。
これは「することができる」と定められていることから、罰金以上の前科が付いた場合でも、医師免許の取消しがなされない可能性もあります。
しかし、医師免許を失う可能性も否定できないため、できる限りの予防策を講ずるべきであるといえます。