常習の痴漢で示談
常習の痴漢と示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
会社員Aは、通勤途中の電車内で、Vさん(17歳)の衣服の上からVさんの体を触ったという、埼玉県迷惑行為防止条例違反(以下「条例」)の疑いで埼玉県上尾警察署の警察官に現行犯逮捕されました。Aさんは、過去5年以内2回、同じ痴漢で検挙され、1回は不起訴処分(起訴猶予)を受け、2回目は罰金刑(20万円)を受けていました。Aさんとしては今回限りは「常習犯として起訴されるだろう」「前回よりも重い刑を受けるだろう」と覚悟していたところ、選任された弁護士が被害者との示談を成立させてくれたおかげで不起訴処分(起訴猶予)を受けることができました。
(フィクションです)
~常習痴漢の刑の重さと常習性の認定~
常習として痴漢などの卑わいな行為を行った場合は、通常よりもさらに刑が重くなります。
各都道府県の迷惑防止条例では、常習痴漢の罰則を「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」と定めれらていることが多いようです。
埼玉県迷惑行為防止条例においても、常習痴漢の罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。
では、いかにしてこの常習性は認定されるのでしょうか?
一番大きな要因としては、同種の前科・前歴があることでしょう。
しかも、本件と前科・前歴の時期(行為の時期、刑終了の時期)が近接していればいるほど常習性は認定されやすくなります。
ただ、認定の要因は、前科・前歴だけではありません。
その他にも、犯行の動機・手口・態様・回数等も総合的に勘案して認定されます。
ところで、常習性が認定されたとしても、示談交渉が不可能、意味がないかといえばそうではありません。
常習性の認定と示談交渉は別個に考えた方がよいかと思われます。
この場合、示談交渉を進めるメリットとしては、仮に示談が成立した場合、起訴が見送られる(不起訴になる)、起訴されたとしても懲役刑ではなく罰金刑が選択される可能性があるということが挙げられます。
~宥恕条項付き示談書とは?~
痴漢事件のおいて、被害者との示談は、検察官の刑事処分の判断に大きな影響を与えます。法律上、検察官は情状、犯罪後の情況も考慮して刑事処分を決めるとなっており(刑事訴訟法248条)、情状、犯罪後の情況に「示談締結の事実」も含まれるからです。また、示談交渉に当たっては、可能であれば宥恕の獲得を目指すべきです。宥恕とは、単に被害者が被疑者(加害者)を許すというだけにとどまらず、刑事処罰を求めないという意思表示のことをいい、この宥恕条項がついた示談書を「宥恕付き示談書」といいます。もちろん、単なる示談書よりは、宥恕付き示談書の方が効果は高く、不起訴(起訴猶予)となる可能性も高まります。
起訴猶予とは、刑事処分である不起訴処分の理由の一つです。検察官は、訴訟条件を具備し、犯罪事実は証拠上明白であるが、被疑者の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情況により起訴するのを見送ることができます。これを起訴便宜主義(または起訴裁量主義)といい、検察官にだけ認められた権限です。情状、犯罪後の情況には、示談締結の他、被疑者の反省の程度や再犯防止に向けた環境等も挙げられます。不起訴(起訴猶予)の獲得を目指すならば、検察官が刑事処分を決める前に、示談締結の事実とともに、それらの事項も併せて主張する必要があります。
~不起訴処分となれば?~
不起訴処分となれば、刑事裁判を受ける必要がありませんし、罰金刑・懲役刑を受けるおそれはなくなります。また、前科も付きません。ただし、前歴(検挙した旨を警察官が記録)としては残ります。また、再び、痴漢をすればその前歴があなたの不利な証拠として扱われるおそれもあります。
痴漢は立派な犯罪ですから二度とやらないという心構えを持つことがなにより大切です。
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