下半身を押しつけ痴漢に
痴漢事件の弁護活動
【事件】
会社員のAさんは、福岡県北九州市を走行する電車内で、女性Vさん(当時19歳)の身体にスカートの上から陰部を押し付けるという痴漢行為をしました。
Vさんが声を上げたことで、Aさんは近くにいた男性数名に取り押さえられ,通報を受けて駆けつけた福岡県折尾警察署の警察官に引き渡されました。
現在Aさんは福岡県迷惑防止条例違反の疑いで取調べを受けています。
(フィクションです)
【迷惑防止条例違反の罪と強制わいせつ罪】
いわゆる痴漢行為によって成立する犯罪は,ほとんどが各都道府県の定める迷惑防止条例違反の罪か強制わいせつ罪(刑法第176条)のいずれかです。
福岡県迷惑防止条例では,第6条において「何人も,公共の場所又は公共の乗物において,正当な理由がないのに,人を著しく羞恥させ,又は人に不安を覚えさせるような方法で次に掲げる行為をしてはならない」とし,その第1号に「他人の身体に直接触れ,又は衣服の上から触れること」を掲げています。
法定刑は、通常の場合6月以下の懲役または50万円以下の罰金で,常習の場合ですと1年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。
他方,強制わいせつ罪を定める条文は「13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は,6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした者も,同様とする」となっています。
強制わいせつ罪におけるわいせつな行為とは,被害者の意思に反して身体的内密領域を侵害し,そのことによって被害者の性的羞恥心を害し,かつ一般人でも性的羞恥心を害されるであろうとされる行為のことをいいます。
具体的には,陰部・乳房・尻・太もも等をもてあそぶ行為,裸にして写真を撮る行為,無理矢理キスしようとする行為などが挙げられます。
加えて,被害者に行為者自身の性器等に触れさせる行為もわいせつな行為に含まれます。
実際には個別具体的な事情に基づき判断されるので、ここに挙げた行為以外も場合によってはわいせつな行為に当たる余地があります。
なお,被害者が13歳以上であった場合,わいせつな行為をする手段として暴行・脅迫がなければ強制わいせつ罪は成立しません。
ここでの暴行・脅迫は,被害者の反抗を著しく困難にする程度に強いものでなければならないとされています。
ただ,痴漢被害にあっていることを周囲に知られたくなかったり,より悪質な行為をされないかという恐怖心などから反抗できない心理状態が比較的容易に形成されることも事実です。
したがって,その当時の状況等を総合的に考慮した結果,客観的な強度がそれほど強いとはいえない暴行・脅迫であっても反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫であるとされる場合もあります。
痴漢行為においては,衣服の上から被害者の陰部や尻,太もも,胸を触ったり揉んだりした場合は迷惑防止条例違反として扱われる場合が多いです。
一方で下着の中に手を入れるなどして直接陰部を触った場合は強制わいせつ罪になる場合が多くなります。
これらはあくまでそういった場合が多いということに過ぎず,衣服の上から触った場合でもその態様などがかなり悪質性の高いものであれば強制わいせつ罪に問われる可能性もあります。
また,「触れ」ることが迷惑防止条例違反の要件になりますので,胸や尻などを撫でまわしたり揉んだりしていなくても,被害者が羞恥心や不安を覚える方法で身体に触れていれば,痴漢として処罰される余地があります。
そのため、最初は偶然他人の身体に手などが当たった場合でも、敢えて手を離さなければ痴漢として検挙されてしまうことも考えられます。
以上のことから,今回の場合ではAさんの行為は少なくとも迷惑防止条例違反に当たる可能性が極めて高いです。
【示談をして不起訴処分や執行猶予に】
痴漢事件では,特に女性が被害者となる場合は一般に処罰感情が強く,また、被疑者の逃走の可能性も高いと考えられていることから、現行犯逮捕されることも多い犯罪です。
もし痴漢による迷惑防止条例違反や強制わいせつ罪の被疑者となってしまった場合は,早急に被害者に謝罪を申し入れ示談を成立させることで不起訴処分や執行猶予を得られる可能性を高めることができます。
ただし,性犯罪では被害者が加害者との面会・交流を拒否するケースが非常に多く,また事件の性質上デリケートな部分も多いため,性犯罪に強い弁護士に事件を依頼することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に所属する弁護士は、痴漢を含む性犯罪事件を数多く経験しており,その中には早期釈放や不起訴処分を獲得につながった事件も多くあります。
痴漢行為があったとして迷惑防止条例違反や強制わいせつ罪の被疑者となってしまった方,折尾警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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