【事例解説】公務員の痴漢事件(前編)
今回は、地方公務員として勤務する者が通勤中に痴漢事件を起こしてしまった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
事例
Aさんは地方公務員として勤務している男性です。
Aさんは、普段から職場まで電車で通勤していますが、朝の混雑する電車内で女性客と身体が密着することが多く、この状況であれば触ってもバレないのではないかと考えるようになりました。
ある日、Aさんはいつもと同じように電車で通勤中、電車内で女性Vさんと密着した際、今なら触ってもバレないだろうと考えて、Vさんの臀部を着衣越しに手で触る痴漢行為を行ってしまいました。
VさんはすぐにAさんの行為に気が付いたため、Aさんの手を掴みながら痴漢行為を咎めました。
その後、Aさんは駆け付けた駅員によって110番通報されることとなり、警察官に任意同行を求められて警察署で取調べを受けることになってしまいました。
(事例はフィクションです。)
痴漢行為について
痴漢とは、公共の場所において相手の同意を得ることなく、わいせつな行為をすることを指します。
電車などの公共の場所において、衣服の上から臀部などを触る行為は痴漢行為として各都道府県が制定する迷惑防止条例に違反することになるでしょう。
さらに、服の中や下着の中に手を入れて直接、陰部をさわる様な行為をすれば、迷惑防止条例よりも処罰が重く規定されている不同意わいせつ罪が成立する場合もあります。
各都道府県の迷惑行為防止条例
条例は、各都道府県が法律に基づいて独自に制定しているものです。
条例違反で有罪判決となった場合でも、他の刑法犯の有罪と同様に前科がつくことになります。
前科がつくと、現職の公務員であれば懲戒処分の対象となったり、保有している資格の停止や剥奪、新たに資格取得ができなくなる恐れがあります。
地方公務員法
Aさんは地方公務員として勤務しているため、事件を起こしてしまった場合、地方公務員法にも抵触することになるでしょう。
地方公務員法には、失職の規定が記載されています。
職員は、第十六条各号(第三号を除く。)の一に該当するに至つたときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失うと規定されています。
(地方公務員法第28条4項)
禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者が挙げられています。
(地方公務員法第16条第2号)
※2025年6月1日から懲役と禁錮は、拘禁刑として施行されています。