痴漢の後に被害者に怪我を負わせ逮捕

2020-06-13

痴漢の後に被害者に怪我を負わせ、強制わいせつ致傷罪で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事例

東京都板橋区に住むAは、混雑している帰宅途中の電車内において、V女(18歳)の下着の中に手を入れるなどのわいせつな行為を行った。
駅で電車が停車すると意を決したV女は、Aの腕を捕まえて駅員に突き出そうとした。
Aは逃走するためにV女の腕を振りほどき、その反動で転倒したV女は怪我を負った。
警視庁志村警察署の警察官は、Aを強制わいせつ致傷の疑いで逮捕した。
Aの家族は、痴漢事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~痴漢と強制わいせつ致傷~

逮捕されてしまったAは、電車内で痴漢行為を行っていますが、まずこの痴漢行為にどのような罪が成立するのでしょうか。
多くの痴漢行為は、全国各都道府県が制定するいわゆる迷惑防止条例によって処罰されています。
しかし、迷惑防止条例の定める罰則は比較的軽く、悪質性の高い痴漢行為にはより重い刑法上の罪が成立する可能性があります。
実務においては、典型的には陰部や胸・尻等に直接触る行為には、迷惑防止条例ではなく強制わいせつ罪(刑法176条)が成立すると考えられています。
したがって、本件Aには、「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者」(刑法176条前段)として強制わいせつ罪が成立し、「6月以上10年以下の懲役」(同条)に処される可能性があることになります。

さらに、注意を要するのが、AがV女に怪我を負わせてしまっている点です。
刑法181条1項は「第176条……の罪(又はこ……の罪の未遂罪)を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は3年以上の懲役に処する」と、被害者に負傷結果や死亡結果が生じた場合には、強制わいせつ致死傷罪という重い犯罪が成立するものとしています。
もっとも本件におけるV女の怪我は、Aによる(176条にいう)「暴行」や「わいせつな行為」から直接生じたものではなく、その後の逃走の過程で生じているにすぎません。
このような場合にも、強制わいせつ致傷罪が成立するのでしょうか。

この点、181条1項にいう「人を死傷させた」という死傷結果は、強制わいせつ行為に随伴して生じていれば足り、必ずしも強制わいせつ罪に該当する行為から直接生じることを要しません(判例・実務)。
したがって、本件のように強制わいせつ罪に当たる痴漢行為ではなく、逃走する過程でV女に怪我を負わせた場合でも、強制わいせつ致傷罪の成立は否定されないと考えられるのです。

~痴漢事件における弁護活動~

痴漢事件では、被害者との示談が成立すれば不起訴(起訴猶予)となる可能性が高いです。
したがって、弁護士を通し被害者とコンタクトを取り、示談を成立させることが刑事処分を回避する意味でも極めて重要になってきます。
もっとも、本件のように強制わいせつ致傷という重い犯罪が成立する場合には、別途の考慮が必要です。
怪我まで負わせている場合には、被害者感情も苛烈になることも少なくなく、示談交渉も容易とはいえません。
また、示談が成立したとしても起訴される可能性も高く、逮捕段階から裁判を見越した準備活動が求められると言えるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、強制わいせつ致傷を含む痴漢事件などの刑事事件を専門としている法律事務所です。
弊所では、多数の痴漢事件を扱っており、事案や罪名に従って適切なアドバイスや弁護活動を行ってまいります。
痴漢事件で逮捕された方のご家族等は、365日年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)までお問い合わせ下さい。

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