痴漢と再逮捕
痴漢と再逮捕
埼玉県本庄市に住む大学生のAさんは、市内の駅に向かう電車の中で女性Vさんに痴漢をしたことで周囲の人に取り押さえられ、駅で待ち伏せていた埼玉県本庄警察署の警察官に埼玉県迷惑行為防止条例違反で現行犯逮捕されてしまいました。その後、Aさんは本庄警察署の留置施設に収容され、警察官、検察官の弁解録取を受けた後、検察官によって勾留請求の手続きを取られてしまいましたが、請求を受けた裁判官が「勾留の必要性なし」との理由により請求を却下したことから釈放されました。Aさんは、その際、警察官から「呼び出しの際は、正当理由がある場合のほかは出頭する」などと記載された誓約書にサインをしました。ところが、Aさんは、その後の警察からの繰り返しの呼び出しにも応じませんでした。そこで、Aさんは、再び同一事実、同一罪名で逮捕されてしまいました。Aさんの妻は一度目の逮捕のときに依頼した弁護士に再び接見を依頼しました。
(フィクションです。)
~ 逮捕 ~
逮捕とは、罪を犯したと疑われている人(被疑者)を比較的短時間拘束することをいいます。
警察に逮捕されると、通常、警察の留置場に収容されます。
その後、警察官の「弁解録取」という手続き(被疑者から事件について話を聴く手続き)を受け、釈放か否か判断されます。釈放されない場合は、逮捕から48時間以内に、検察官のもとへ事件と被疑者を送致する「送検」という手続が取られます。
送検を受けた検察官からも、警察官と同様、「弁解録取」という手続きを受け、釈放か否か判断されます。釈放されない場合は、勾留請求手続きが取られたと考えてよいでしょう。この手続きは、送検のときから24時間以内になされます。
勾留請求されると、今度は裁判官の「勾留質問」という手続き(これも事件について話を聴く手続き)を受けます。その上で、検察官の勾留請求を許可するか却下するか判断されます。却下された場合は、検察官の不服申し立てが認められない限り釈放されます。今回のAさんもこの段階で釈放されているようです。
~ 釈放後の再逮捕に注意 ~
再逮捕とは、同一事実につき、時を異にして再び逮捕することをいいます。
再逮捕は原則的として認められていません。
なぜなら、これを認めてしまうと、法が定めた厳格な身柄拘束期間の制限(たとえば、警察官は逮捕から48時間以内に送検しなければならないなどの決まりごと)が機能しなくなり、人権保障が危うくなるからです。
なお、再逮捕とは、あくまで
同一事実
に関する逮捕のことをいい、
別事実
の逮捕は、再逮捕とはいいません。よく、マスコミなどで「再逮捕」という言葉を使われますが、多くはすでに
逮捕された方が「別事実」で逮捕されたこと
を意味しているのであって、本来の再逮捕の意味とは異なることに注意が必要です。
同一事実かどうかは、前の逮捕事実と再逮捕された事実の
罪名はもちろん、犯行時期・場所、被害者、犯行態様、保護法益等
を比較して判断されます。
今回、Aさんは同一日時・場所、同一被害対する痴漢の事実で逮捕されており、本来の意味での再逮捕であって、原則として許されないことになります。
~ 再逮捕にも例外がある? ~
しかし、再逮捕を原則として禁止する趣旨は、身柄拘束の不当な蒸し返しを禁ずる点にあり、それに該当しない場合には再度の身柄拘束を認めても差し支えないと考えられています。
そして、不当な蒸し返しか否かは、
・逃亡・罪証隠滅のおそれが再発生するなど、先の逮捕終了後の事情変更により再逮捕すべき合理的必要性が生じたこと
・犯罪の軽重や嫌疑の程度その他諸般の事情から、被疑者の利益を考慮してもなお再逮捕がやむを得ないと言える程度の再逮捕の高度の必要性が生じたこと
が必要とされています。
再逮捕された場合は、本当にその要件を満たしているのかどうか厳密にチェックする必要がありますから、再逮捕でお困りの際は弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、痴漢事件などをはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。