看護師を目指す大学生の痴漢事件
今回は、痴漢事件を起こした大学生が看護師を志望している場合に注意すべきポイントについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
東京都多摩市に住むAさん(20歳)は医学部看護学科に通う大学3回生です。
Aさんは通学に電車を利用していますが、ある日、目の前にいた女性Vの臀部に劣情を催し、着衣越しにこれを撫でまわしてしまいました。
Vに気付かれたAさんは、Vと周りの乗客によって羽交い絞めにされ、駅員に引き渡されました。
駆け付けた警察官により、Aさんは警視庁多摩中央警察署に引致され、取調べを受けています。
逮捕を知ったAさんの親は、Aさんが看護師になれなくなってしまうことを危惧しています。
どうすればよいのでしょうか。(フィクションです)
~Aさんにはどのような罪が成立するか?~
Aさんの行った行為は典型的な「痴漢」行為です。
このような痴漢行為を行うと、通常、犯行を行った自治体の制定する迷惑防止条例違反の罪が成立します。
東京都内でケースのような行為を行うと、「東京都公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」違反の罪(第5条1項1号、第8条1項2号)が成立することになります。
法定刑は「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」となっています。
大阪府内でケースのような行為を行うと、「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」違反の罪(第6条1項1号、第17条1項2号)が成立します。
こちらも法定刑は「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」となっています。
なお、痴漢の犯行態様が悪質であれば、上記のような迷惑防止条例違反の罪ではなく、「強制わいせつ罪」(刑法第176条)が成立する場合もあります。
~ケースの事件において気を付けるべきポイントは?~
Aさんの親が危惧している通り、ケースの事件を起こしてしまったことにより、看護師になれなくなってしまう可能性があります。
どのような根拠でこのような不利益を被ることになるのでしょうか。
保健師助産師看護師法第9条は、次の通り定めています。
第九条 次の各号のいずれかに該当する者には、前二条の規定による免許(以下「免許」という。)を与えないことがある。
一 罰金以上の刑に処せられた者
二 前号に該当する者を除くほか、保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者
三 心身の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
四 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
初犯の痴漢事件において、適切な弁護活動を行わなければ、略式手続を経た上で、罰金刑を言い渡される可能性が高いでしょう。
すると、上記第1号に該当してしまうことになってしまいます。
「免許を与えない『ことがある』」という条文なので、第9条1号に該当してしまった以上、絶対に免許がもらえない、というわけではないのですが、これらに該当しないように事件を解決できた方が良いのは当然です。
それでは、どうすれば良いでしょうか。
~不起訴処分を獲得する~
検察官は、Aさんの反省の態度や、示談の有無、Vの処罰感情を考慮した上で、Aさんを裁判にかけない処分をすることができます(起訴猶予処分)。
裁判にかけられなければ、刑罰を言い渡されることはないので、上記第1号に該当せずに済みます。
初犯の痴漢事件において示談が成立すれば、不起訴処分を獲得できる見込みが十分あります。
もっとも、示談交渉には時間を要する場合もあり、時間も無限ではありません。
なるべく早期に弁護士を依頼することが、有利に事件を解決する近道といえるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
看護師を目指すご家族が痴漢事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。