強制わいせつ致傷で逮捕・裁判員裁判の弁護活動

2020-09-12

痴漢事件で強制わいせつ致傷罪によって逮捕されてしまった事例を題材に、裁判員裁判における弁護活動等について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

兵庫県尼崎市に住むAは、通勤中の電車内において、V(18歳)の下着の中に手を入れわいせつな行為をしていたところ、意を決したVに腕を掴まれた。
逮捕されることを恐れたAは、Vの手を振り払い、身体を押しその場に転倒させた。
Vは、これによって怪我をするに至った。
兵庫県尼崎北警察署の警察官は、Aを強制わいせつ致傷の疑いで逮捕した。
Aの家族は、痴漢事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実を基にしたフィクションです。)。

~痴漢が怪我を負わせてしまった場合~

痴漢事件で被害者に怪我まで負わせてしまった場合には、非常に重い罪に問われる可能性があります。
まず、Aが行った電車内でのVへの痴漢行為について検討します。

通常、電車内で痴漢行為を行った場合には、各都道府県が制定する「迷惑防止条例」違反となることが多いでしょう。
たとえば、着衣の上から被害者の身体に触るような行為は、迷惑行為防止条例に反する行為として処罰されることになります。
これに対し、着衣の上からではなく直接陰部等に触れるなど、より悪質な行為は強制わいせつ罪(刑法176条)に問われることになると考えられています。
本件のように、下着の中にまで手を入れた痴漢行為に関しては、刑法176条前段の強制わいせつ罪に該当することになるでしょう。

さらに本件では、Aは逃走過程においてVに傷害を負わせてしまっています。
この場合、Aは刑法181条1項の強制わいせつ致傷罪に問われる可能性があることに注意が必要です。
この罪は、「無期」または「3年以上の懲役」が科される非常に重い罪です。
判例(最決平成20年1月22日)によれば、強制わいせつ致傷罪における負傷結果は、わいせつ行為やその手段たる暴行行為によって生ずる必要はないと解されています。
したがって、負傷の結果は強制わいせつ行為に随伴する行為から生じた場合でもその成立は否定されません。
したがって、本件のようにAが逃走するために暴行を加えた場合であっても、強制わいせつ致傷罪が成立しうることになります。

~裁判員裁判対象事件における弁護活動~

上述のように強制わいせつ致傷罪(刑法181条1項)は、「無期」または「3年以上の懲役」という刑罰を規定しています。
ここで、注意すべきなのが、一定の重大犯罪に関しては一般の国民である裁判員が関与する裁判(裁判員裁判)の対象となることです。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項によれば、法定刑に死刑または無期刑を含む事件は裁判員裁判対象事件であるとされています。
したがって、無期刑を含む強制わいせつ致傷罪によって起訴された場合には、(原則として)裁判員裁判を受けることになります。
裁判員裁判を受けるか否かを起訴された被告人が選択することはできないため、対象事件で起訴された場合(あるいは起訴が予想される場合)には、特別の準備が必要といえます。
したがって、逮捕段階という早い段階から裁判員裁判を見据えた弁護活動が重要になってくるのです。
痴漢事件でも本件のように重大事件として扱われることもあることから、決して事態を軽く見ずに迅速に対応することが肝要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、強制わいせつ致傷事件などの痴漢事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
裁判員裁判対象事件は、刑事事件の専門知識や経験が不可欠な事件であり、刑事事件を専門としている弁護士に相談することをおすすめします。
痴漢事件で逮捕された方のご家族は、年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお問い合わせください。

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