【事例解説】電車内の痴漢で自首を検討
電車内の痴漢で自首を検討している事例を参考に、自首について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
会社員のAさんは、朝の通勤時の混雑した電車内で前に立っていた女子高校生のスカートの中に手をいれて下半身を触る痴漢行為をしてしまいました。
痴漢行為時には女子高生から声をあげられることはありませんでしたが、Aさんが会社の最寄り駅につき下車するときに被害者の女子高校生から「痴漢してましたよね。」と声をあげられてしまいました。
会社の最寄り駅だったこともあり、この場で逮捕されてしまうと会社の人にバレてしまうと思ったAさんは、その場から逃走し、遠回りして会社に出社して一日の勤務を終えました。
しかし、駅には防犯カメラもあり、被害者の他にも数名の人に追いかけられた状況でもあったため、逮捕されるのも時間の問題だろうと思い、自首をするため一度弁護士に相談することにしました。
自首・出頭とは
自首とは、捜査機関に対し自身の犯罪事実を申告することをいいます。
自首が成立すれば、裁判で最終的な判決を受ける場合において、刑が減軽される可能性があります。
また、捜査を受ける段階においても、自発的に犯罪事実を申告したことが評価され、逮捕されずに済む可能性もあります。
※刑法
(自首等)
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 省略
自首が成立するためにはいくつかの要件を満たす必要があり、それらを充足しなければ「自首」は成立せず、「出頭」として取り扱われることになります。
自首が成立するためには
自首が成立するためには、
①自発的に自己の犯罪事実を申告すること
②自己の訴追を含む処分を求めること
③捜査機関に対する申告であること
④捜査機関に発覚する前の申告であること
が必要です。
これらを満たさない場合は、「出頭」扱いとなります。
「捜査機関に発覚する前」とは、犯罪事実が捜査機関に全く認知されていない場合、および犯罪事実は認知されていても犯人の誰であるかが認知されていない場合をいうとされています。
なお、犯人が明らかで、犯人の所在だけが不明であるという場合は「捜査機関に発覚する前」とはいえないとされています。
事例のAさんの場合、目撃者の証言や駅の防犯カメラの影像などからAさんが犯人であることが既に発覚している可能性があります。
自首をした際に、Aさんが犯人であることが既に発覚していた場合には、自首は認められず出頭扱いになります。
自首をするべきか
自首のメリットとしては、前述しているように、自首が成立した場合は刑の任意的減軽事由となること及び逮捕を免れる可能性が高まることにあるでしょう。
一方でデメリットもあり、自首が成立するような状況は、警察に犯人が発覚していない状況ですので、自首をしなければ発覚していなかったかもしれない犯行が警察に発覚してしまう可能性があります。
また、自首をしたからといって、逮捕されない、刑の任意的減軽が絶対受けられるとは限りませんので、これを目的に自首した場合には思っていたメリットを享受できない結果になってしまうこともあるでしょう。
このように、自首をしたほうが良いか否かについては、様々な要素や状況を考慮にいれて判断する必要があります。
そのため、自首をするかどうか迷ったときは、一度弁護士に相談して当該状況におけるメリット・デメリットについてアドバイスを受けることをおすすめします。