薬剤師と欠格事由

2019-05-09

薬剤師と欠格事由

福岡市南区に住むAさんは薬剤師を目指す大学生(21歳)です。
ところが,ある日,Aさんは,学校の勉強や実習などのストレスから,通学中の電車内において,前に立っていた女性の衣服の上から胸を揉むなどしました。
その場で女性が悲鳴を上げたことから,Aさんは,周囲にいた男性らに取り押さえられ,その後,駆け付けた警察官に引き渡され逮捕されました。
福岡県南警察署から逮捕の通知を受けたAさんのご両親は,「逮捕によって薬剤師の免許が取得できないのではないか」と不安になり,弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

~ 薬剤師と欠格事由 ~

薬剤師など国家資格を必要とする職業は,本質的に職責が重く,国民からの信頼を得られてはじめてその職責を全うできるものです。
ですから,法律で,予め,資格を得られることができない,免許を与えることができない場合(欠格事由)を定め,欠格事由に該当する方には資格を与えない,免許を与えないということにしています。

薬剤師でいえば,薬剤師法に「絶対的欠格事由」と「相対的欠格事由」を定めています。
「絶対的欠格事由」とは,当該事由に該当すれば,必ず免許が与えられない事由のことをいいます。
それに対して「相対的欠格事由」とは,当該事由に該当しても,必ずしも免許が与えられないわけではなく,裁量権者の判断によって決まる事由のことをいいます。
「絶対的欠格事由」は,薬剤師法4条に,

未成年者、成年被後見人又は被保佐人には、免許を与えない。

と規定されています。

それに対して,「相対的欠格事由」は,薬剤師法5条に

次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一 心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか、薬事に関し犯罪又は不正の行為があつた者

と規定されています。

~ 痴漢と欠格事由 ~

痴漢行為は,通常,各都道府県が定める迷惑行為防止条例(各都道府県により名称は異なります)に当たります。
そして,罰則については,概ね「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」,常習の場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」と定められていることが多いと思われます。
そこで,今回,検討すべきことは,Aさんが「相対的欠格事由」,すなわち,薬剤師法5条3号の「罰金以上の刑に処せられた者」に当たるか否かということになります。

= 罰金以上の刑 =

刑の種類については刑法9条に定められています。
それによれば,刑の種類(主刑)は,死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留及び科料です。
そして,刑法10条により,主刑の軽重は,刑法9条に規定する順序によるとされています。つまり,法律上は,死刑→懲役→禁錮→罰金→拘留→科料という順に刑の重さが決められています。
したがって,「罰金以上の刑」とは,罰金,禁錮,懲役,死刑のことを意味することになります。

= 処せられた =

処せられたとは,その罪について裁判を受け,その裁判が確定したことをいいます。
つまり,刑事手続では,逮捕された場合,概ね「逮捕→勾留→起訴→裁判→判決・命令→裁判の確定」という流れをとりますが,この裁判の確定までいってはじめて「処せられた」ということになります。
したがって,

逮捕されたばかりの方
・勾留中の方
不起訴処分を受けた方
・裁判中の方
・判決を受けたが,控訴など不服申し立て中の方

などの方は,全て裁判確定前の段階の方であり,「処せられた」者には当たりません。Aさんのご両親も,逮捕の事実で薬剤師の免許が受けられないのではないかとご心配されているようですが,逮捕の事実のみでは欠格事由には当たりませんからひとまず心配なさらなくていいでしょう。

~ 欠格事由を回避するには? ~

そうはいっても,Aさんが起訴されて裁判で「有罪」を受け,罰金以上の刑に処せられる可能性がなくなったわけではありません。
そこで,このような可能性を回避するために,被害者との示談をお勧めいたします。
被害者と示談を成立させることができれば,不起訴処分獲得の可能性が高くなり,よって,Aさんが相対的欠格事由に当たることを回避することも可能となるからです。
ただし,示談交渉はあくまで相手があっての話です。
そもそも示談交渉に応じてくれないということもありますし,応じてくれたとしても示談締結までには至らないこともあります。
また,示談したからといって必ず不起訴処分になるわけでもありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,痴漢事件をはじめとする刑事事件少年事件を専門に扱う法律事務所です。
痴漢事件を起こしてしまい欠格事由にお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。
(福岡県南警察署への初回接見費用:35,900円)

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